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第二十四回 島田律子氏 × ㈱未来酒店、YUMMY SAKE Ltd. 山本祐也氏 伝統は“守る”のではなく“創る”もの 

第二十四回  AI を活用した日本酒のカテゴリー診断が ホテル、レストランの未来を切り開く

【月刊HOTERES 2018年09月号】
2018年09月07日(金)
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あなたに合わないのはジャズであって
クラシックという音楽は合うかもしれない
 
島田 山本さんはAI を活用したサービス「YUMMY SAKE」も手掛けています。山本 YUMMY SAKE は、自分の味覚に合う日本酒を把握していない一般のお客さまがほとんどであることから始めたプロジェクトです。お客さまは自分の味覚に合う日本酒が分からないため店員に相談します。お店で本物のプロフェッショナルに出会えたお客さまは、自分に合った日本酒に出会えるでしょう。
 
 ただ、すべてのタイミングでプロの店員がいるとは限らないので、いない場合はしっかりとしたコミュニケーションが成立しないこともあります。コミュニケーションが図れなかった場合には、おそらくお客さまがそのお店から離脱するといった事態も起こっていたのだろうと想像します。その意味でも、AI によってその標準を向上させる仕組みを構築できれば、お客さまの取りこぼしも減少させることにつながるのではないかと思います。
 
 日本酒を音楽にたとえてみます。本来はクラシック好きの人が、自分ではまだそのことに気づいていないままに、たまたまジャズのレコードを買ってしまうとします。そのレコードを聴いて「音楽ってこんな感じなのか」とネガティブな印象を持ち、「じゃあ、私には音楽は合わないな」と思ってしまったとしたら、それはおかしな話ですよね。「あなたに合わないのはジャズであって、クラシックという音楽は合うかもしれません」というのが、この場合の正しいアドバイスでしょう。
 
 このたとえ話から考えてみると、お客さまが自分の味覚に合った日本酒を苦労することなく選べるようになれば離脱の可能性は少なくなるはずです。クラシックが好きな人はクラシックを買えるし、ジャズが好きな人はジャズが買える。その仕組みを創り上げるためにAI の力を使ってみましょうというのが、YUMMY SAKE プロジェクトをはじめたきっかけです。
 
 
オノマトペで表現した12 カテゴリーで
あなたの味覚に向けて
日本酒をおすすめ
 
島田 特に訪日外国人は、日本酒の選び方が分かりませんから重宝すると思います。
 
山本 YUMMY SAKE の診断にあたっては、お客さまには10 種類の日本酒をブラインドテイスティングしていただき、それぞれ5段階で評価してもらいます。加えて、味覚に関する質問も少しさせていただきます。それらの情報をまとめて、その人に合った日本酒のカテゴリーを結果として提示していくのです。
 
 ここで重要なのは「カテゴリーで押さえる」ということです。ピンポイントで銘柄を示すやり方ではなく、カテゴリーで結果を出す方がホテルやレストランでYUMMY SAKE が使われるシーンを想定したときにしっくりくると感じたからです。
 
 ホテルやレストランにYUMMY SAKEと連携していただくことで、「お店のおすすめ」ではなく「あなたの味覚へのおすすめ」というアプローチで日本酒を提供できる形を創っていくことができます。お客さまがスマートフォンの画面に映ったYUMMY SAKE の診断結果をお店のスタッフに見せるだけで、その人の好みに合わせた日本酒をテーラーメイドでおすすめできるようになるのです。
 
 日本酒の好みのカテゴリーはオノマトペ(音象徴語)を使って表現しました。YUMMY SAKE は日本酒通ではない方々とのコミュニケーションツールですから、予備知識がなくても入りやすい形にしたかったのです。「アワアワ」「スルスル」「トロトロ」「シャラシャラ」「キュンキュン」「ホワホワ」「ビュンビュン」「パタパタ」「クルンクルン」「プリプリ」「ヤワヤワ」「ユラユラ」の12 種類の味覚カテゴリーに分けています。
 
太田 ホテルやレストランとのコラボレーションにも取り組んでいくのでしょうか。
 
山本 ホテルは街のゲートウェイの役割を担っています。単に宿泊するだけでなく、ホテルの中には地域の情報が詰まっていて、コンシェルジュがさまざまなことを教えてくれます。そこにYUMMY SAKE のキットを設置していただき、ルームサービスなどで試していただく仕組みを創るというのも有効な方法の一つとして可能性を感じます。
 
 レストランに向けては、お店のグランドメニューをベースに私たちがそのお店で取り扱っている日本酒を味覚カテゴリーに分類していく方法を考えています。ホテル館内のレストラン、街場のレストランをリストアップして、グランドメニューに載っている日本酒に12 種類の味覚カテゴリーを紐づけていくわけです。
 
 こうした試みはホテル、レストランにとって新しいサービスの提供となるので、お客さまの満足度向上につながると思います。特にインバウンドのお客さまに向けて、日本における食の体験をより楽しむことができるコンテンツとしての価値を提供できると思います。

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