コーヒーはホテルの顔である。ラウンジや客室、レストランで提供される一杯のコーヒーの味と香り、そしてその一杯をサービスするスタッフの立ち居振る舞いが、そのホテルの印象を左右する。コーヒーを飲むシーンが増え、選択肢が多様化する中で、ホスピタリティーのプロ中のプロであるホテルという業態において提供されるコーヒーは、ほかとは差別化されたクオリティーを身にまとう必要があると言えるだろう。
「世界中どこで飲んでも、すぐにilly の味だと分かる。そんなコーヒーのブランドは他にはないでしょう」と言うキーコーヒー イリー事業部長の藤井真志氏
本格的なイタリアンエスプレッソを「HoReCa」市場に向けてアプローチ
ホテルのコーヒーに差別化をもたらすエスプレッソコーヒーがある。イタリア・トリエステ市に本社と工場を持つillycaffè社が世界140 カ国で展開する「ill y」ブランドだ。
本場イタリアのエスプレッソの奥深さを追求し続け、1933 年の創業以来、高いクオリティーを守り抜くilly は、本物のイタリアンエスプレッソを愛する世界各国の人々から今なお厚い信頼を寄せられている。
2015 年1月から日本におけるilly の独占販売をスタートさせたキーコーヒーは、4月からイリー事業部を新設。同社が「HoReCa(ホレカ)」と呼ぶホテル、レストラン、カフェの市場に向けて、本格的な訴求、啓蒙、提案活動を推進していくのだ。
「業態や抽出方法など、さまざまな面で日本のコーヒー市場は多様化してきています」とイリー事業部長の藤井真志氏は言う。
「その時代背景の中、キーコーヒーでは、ホテルというある意味非日常的な空間でエスプレッソコーヒーを飲んで特別な体験をしていただくことのお手伝いをイリーブランドを通じて、させていただきたいと考えています」
多様化する日本国内のコーヒーマーケットにおける差別化とともに、増加するインバウンドへの訴求という面からも、illy の国際的なブランド力はホテルに大きな価値をもたらすだろう。
「キーコーヒーが担う、コーヒーによってお客さまに満足を与え続ければならないという使命において、本物のイタリアンエスプレッソを日本で普及、振興させていきたいという強い思いを抱いています。私たちのこの思いは、illycaffè 社の理念とも共鳴しています」
単なるilly 製品の卸売ではなく、illy が生み出す一杯のエスプレッソのおいしさによって、コンシューマーを心から満足させることまで責任を持つことがキーコーヒーの果たすべき役割となる。
コーヒー農園の生産者の生活を
第一に考えた取引の形を貫く
illycaffè社は創業以来コーヒー豆を栽培する農園に対して、そこで働く生産者たちの生活を第一に考えたやり方に基づいて取引を続けている。収穫されたコーヒー豆を買い取るだけでなく、産地への支援活動や農業技術の指導などにも力を入れているのだ。
例えば毎年開催している「ブラジルアワード」では、約1000 軒の農園から出品されたサンプルの中から優秀なコーヒー豆を選び、上位となった農場に賞金を授与、取引の契約を結ぶといったコンテストを実施している。さらに賞金は、農場で汗を流すすべての労働者にまで必ずまわるような仕組みも構築しているという。
また、農園との直接交渉による取引をするillycaffè 社では、市場価格よりも高い価格でコーヒー豆を仕入れている。さらにその分の利益についても、労働者まで行き渡る形を採っている。コーヒーの高品質は大前提として、国際社会への貢献やサスティナビリティーの面においても、illy はほかに類を見ない高いレベルでビジネスを展開しているのである。
目指すべき唯一無二の味にたどり着くために
厳密なブレンド調整が求められる
illycaffè 社独自のコーヒーとの向き合い方は、製品づくりにも生かされている。
illy のエスプレッソは、アラビカ種100%に徹底的にこだわり、ハイエンドブランドの味を守り続けている。ブレンドは、目指している唯一の味にたどり着くために厳密に調整しながら作り上げられる。自然物であるコーヒー豆は年ごとに変化することから、illy の味を維持するためには微妙な配合の調整が求められるのだ。ただ一つの味を守るためのブレンドを貫き通すというリスペクトするべき頑固さは、飲む人に世界中どこの国でもilly のおいしさを変わらずに感じさせる。
illy のこだわりは、コーヒーのおいしさを閉じ込める容器にも反映されている。自社工場で製缶まで行なっている業務用3㎏缶は、賞味期限3年を実現している。
焙煎したてのコーヒー豆からは、アロマが含まれた二酸化炭素が発生し続けている。一般的には、二酸化炭素ガスの発生が収まるまでしばらく置いてなじませてから袋や缶にコーヒーを詰める。できる限りアロマを逃がしたくはないのだが、内側からのガスの圧力によって容器が破裂してしまうため、やむを得ずこうした工程を経ている。
しかし、illy の業務用3㎏缶は、缶内圧力が一定に保たれる特殊構造を採用することで、ガスが発生しきる前のパッキングを可能にし、3年もの長きに渡りアロマが損なわれない製品を消費者のもとに送り届けることができると言う。「イタリアンエスプレッソを世界中の人々に飲んでもらいたい」という思いが、このように差別化された製品を生み出したのであろう。
一杯のエスプレッソコーヒーを
期待以上の品質で体験していただく
「キーコーヒー全社としてのビジネスは、日本国内の外食産業においてあらゆる業態・シーンをカバーさせていただいています。従ってバリエーション豊かなラインアップの中から、各施設や店舗に最適なものを提案することが営業活動のポイントとなります。そのバリエーションの一つとしてilly が加わったことで、エスプレッソにこだわるロケーションとして最上位のグレードに位置づけられるホテルをはじめとする施設や店舗のお役に立てる機会を増やしていけると考えています」
一杯のエスプレッソコーヒーを、期待以上のクオリティーで体験していただく。そうしたilly の価値を存分に発揮させるため、キーコーヒーはイタリアンエスプレッソを通じて満足のある体験自体を創造していこうとしている。インバウンドのお客さまが、日本でilly を飲めることに喜びを感じる。イタリア旅行で「illy」を飲んだ経験を持つ日本人のお客さまが、illy のロゴを日本で見かけて、飲んだ瞬間にイタリアの情景を思い浮かべる。illy がもたらすインパクトのある体験をいくつ生み出していけるかが、キーコーヒーの力の見せどころとなるだろう。
illy を導入したホテル、レストラン、カフェにおけるエスプレッソマシンのセッティングやメンテナンスや、さらにそこで働くバリスタをはじめとするスタッフたちに、エスプレッソに関する知識や技術を提供することも、キーコーヒーの重要な役割と言える。
「エスプレッソの抽出技術、コーヒーマシンのメンテナンス、接客の方法、メニューづくり、さらには笑顔や服装といった細部に至るまで、illyブランドに合致したサービスのサイクルが現場でまわり続ける形を構築できたときにはじめて、最高のエスプレッソを途切れることなくお客さまに提供できるようになるのだと思います。トレーニングやメンテナンスを通じて、そうしたサイクルを創造するための活動を続けていく形がilly のビジネスモデルです。そのモデルを日本で具現化していくことが、私たちキーコーヒーの最重要課題と言えるのです」
キーコーヒーの長期的な目標の一つには、多様化された日本のコーヒー市場において、illy のロゴの入ったカップで人々がエスプレッソを飲んでいるシーンを創出していくこともある。illy の価値を明確に表現できるシーンの創出を目指したこの活動は、HoReCa 市場を中心にこれから本格的に推進されていく。