1935 年10 月10 日、長崎県雲仙市に開業した雲仙観光ホテルは、2035 年に迎えることになる開業100 周年に向けてその歩みを着実に進めている。良きものは維持し、守り続けること。長い年月で失われてしまったものは、もう一度創り直すこと。その精神を大切にしながら、伝統を語り継ぎ、新しい時代の幕開けにふさわしい国際交流事業を推進していこうとしている。そのかじ取りを任された船橋聡子氏は総支配人に就任以来、現場が抱えていた課題を克服し、改善による業績回復に努めてきた。ホテルそのものを愛する船橋氏に、将来に向けた取り組みの方向性を聞いた。
㈱堂島ビルヂング 取締役 ホテル事業部長
雲仙観光ホテル 総支配人
船橋 聡子 氏
(Satoko Funahashi)
愛知県名古屋市出身。オレゴン州立大学にて観光英語を習得後、スイスNSHドイツ語学科卒業。同Swiss Hotel Management School Post graduateDiploma 修了。大手シティホテル接遇部、外資系ホテル宿泊営業部、在外日系ホテル開業準備室においてゲストサービス基盤の立ち上げ、マーケティング戦略・広報に従事。また、新聞社事業部において、国際イベント、エキシビションなどの事務局マネージメントに従事。国内外において、皇族、各国大使などVIP 接遇マネージメント、マーケティング戦略・広報、オペレーション管理などに従事。2015 年12月18日雲仙観光ホテル総支配人に就任。
雲仙観光ホテル 〒854-0621 長崎県雲仙市小浜町雲仙320 ☎ 0957-73-3263 http://www.unzenkankohotel.com/
天災にも負けず
営業利益率、ADR を回復基調に
❒ 総支配人に就任されてからの雲仙観光ホテルの業績の推移を教えてください。
雲仙観光ホテルは2014 年7 月に3.5カ年計画を立てました。その事業計画がスタートしたとき、私は本社経営企画部長(ホテル副総支配人兼務〈マーケテイング戦略担当〉)を務めていました。総支配人に就任したのは2015 年12月で、3.5カ年計画によって本格的な事業の見直しに着手してから1.5 カ月がたったタイミングでした。
144 期(2015 年10月〜2016 年9月)のADR は前年比25%増、145 期(2016年10 月〜17 年9 月)は前年比31%増となりました。業績は顕著な右肩上がりのカーブを描いていて、特に145 期のADR の成長率は就任以前より62%増となっています。
2016 年4 月に熊本地震が発生した144 期、17 年7月の九州北部豪雨のあった145 期と約1 年ごとに天災に見舞われ、それぞれゴールデンウィークや夏休みの高稼働時期に成約していた集客が獲得できなかったというネガティブな状況もありました。
そのため3.5 カ年計画で見込んでいた売り上げは達成できなかったのですが、2017 年9 月末までには改善の兆しが見え始め、146 期(2017 年10 月〜18 年9 月)の秋の繁忙期である17 年11 月を迎えるころには天災前の状況にほぼ近づくことができました。17 年11 月の単月の売り上げは、対予算で宿泊が102%、料飲が108%、普段はなかなか伸びないバーについても100%超と好調に推移しています。
146 期の売り上げは前年比15%増、ADR は3 万6000 円から3 万8000 円を見込む形で事業計画を立てて、現在取り組んでいるところです。
❒ この度の年末年始の動向は。
雲仙観光ホテルは39 の客室があるのですが、ラグジュアリーブランドの戦略を遂行するため、現在は基本的にスタンダードの部屋を販売していません。そのため実質的な販売客室数は26 室となっているのですが、年末年始は26 室がほぼ満室に相当するほどの高稼働でした。加えて2 泊、3 泊のお客さまが増えています。
毎年いらっしゃるリピーターのお客さまが3 割ほどを占め、皆さまがくつろいで過ごすことのできる、本当のホスピタリティーを感じるホテルの形をこの年末年始は実現できたと自負しています。