北村剛史
Takeshi Kitamura
㈱ホテル格付研究所 代表取締役所長
㈱日本ホテルアプレイザル 取締役
不動産鑑定士、MAI(米国不動産鑑定士)、FRICS(英国ロイヤル・チャータード・サベイヤーズ協会フェロー)、CRE(米国不動産カウンセラー)慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科附属システムデザイン・マネジメント研究所研究員。ホテル・旅館の不動産鑑定評価会社である㈱日本ホテルアプレイザルの取締役。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科では「ホテル・旅館の人格性、パーソナリティー」をテーマに研究活動に従事
昨今の外部環境を改めて見てみますと、外国人訪日観光客数が2017 年には2800 万人を突破し今後ますますの国際観光市場の拡大が期待され、またインターネットを通じた情報網も進化を続けており、「ブログ」や「ツイッター」、「フェイスブック」等ソーシャルメディアがさまざまな情報をボーダーレスに運ぶと同時に個人が有するネットワークが一層深化しています。そのような環境が、単に顧客ニーズを充足するような「フロー消費型」観光から記憶やさまざまなデータとして体験が蓄積され、個々の顧客が有するネットワークを通じてそれら体験が共有され体験価値がさらに引き上がる「体験ストック型」観光へと顧客のニーズを大きく変化させています。今回は「フロー」ではなく「ストック」という概念に改めて着目し、観光産業やホテル経営およびホテルサービスとの関連を再度改めて考えてみたいと思います。
このように現在の顧客を取り巻く環境は、さまざまなサービスや商品の消費を単なるフローとして文字通りの「消費」ではなく、体験をほかの人とシェアし、またその体験がさまざまなメディアや媒体を通じて行き交い「ストック」されていく新たな時代と言えます。
そのような環境にあって日本という国の観光素材を改めて考えますと、長い歴史の中で知が積み重ねられた文化を大切に保持する多くの温泉街やそのほか多数の観光地を有しています。そこで感情を揺さぶるようなていねいなサービスや体験を提供できるのであれば、日本はストック型観光ニーズに合致した国際観光デスティネーションとして非常に魅力的なマーケットに位置づけられるはずです。