銀座から「松坂屋」が消えるという衝撃
2016年10月26日、大きな注目を浴びていた「GINZA SIX」の詳細が明らかになった。
GINZA SIXは銀座にある「松坂屋銀座店」跡地およびその隣接地における再開発事業。 「銀座」という日本の中心における、「1.4ha」というその広大な敷地の再開発事業ということもあって、世間からの注目は大きかった。
まず皆を驚かせたのが、「脱・百貨店」というJ.フロント リテイリング(大丸・松坂屋の親会社 以下「Jフロント」)の戦略だった。
「松坂屋」があった地で、松坂屋という名を捨てるという挑戦。百貨店事業を取り巻く環境が変化しているとは言え、銀座にあった老舗ブランドだっただけに、この決断は衝撃的であった。同時に、誰もがJフロントの同プロジェクトにかけるなみなみならぬ思いというのを感じずにはいられなかった。
「一体誰なんだ!?」 関係者を驚かせた、ベンチャー企業の登場
当然大きな関心を集めたのは、そのGINZA SIXに一体どのようなテナントが入るのか?ということだ。
路面に並ぶ「The House of Dior(仮)」、「CELINE」、「SAINT LAURENT」、「Van Cleef & Arpels」、「VALENTINO(仮)」、「FENDI」など著名ブランドをはじめとして、200を超えるテナントが集う。
そして、24店舗あるレストランの中で、500坪と一際大きな面積を占めるスペースにラウンジ&レストラン「ザ・グラン銀座」を運営する企業に注目が集まった。
—バリューマネジメント。
「一体誰なんだ!?」そういった声も一部にはあった。
ホテルやレストラン、ウェディング業界の人間、もしくは関西の人間であればその名を知っている人も多いかもしれない。しかし、一般顧客層には違う。というのも、同社の運営施設は関西に多く、東京では著名レストランのコンサルティングを水面下で手がけた実績はあるものの、公表されているのは「The Suite GINZA」の運営のみ。
しかし、実は同社は「日本の文化を紡ぐ」というミッションを掲げ、国内外において数々の施設の再生を手掛けてきた実績を持つ。そして、その実績が評価され、革新的かつ潜在成長力の高い事業を行う、志の高いベンチャー企業の経営者を称える表彰制度Japan Venture Award(ジャパンベンチャーアワード)において「日本文化再生特別賞」を今年受賞した。
「地方創生」が日本の重点施策となる中、同社には再生のプロフェッショナルとして政界の著名人など多くが同社の施設を訪れたり、相談が多数寄せられたりするなど、今、大変大きな注目を浴びている企業なのである。
Japan Venture Awards 2016「日本文化再生特別賞」受賞のシーン。左が他力野氏
銀座の街を活性化させ、
世界に「日本」を発信する
ここで一つの疑問が浮かぶ。
これまで再生を手掛けて来た同社が、GINZA SIXという新規開業プロジェクトにおいて何をやるのか?
同社代表取締役社長の他力野氏は語る。
「最初お話をいただいたとき、迷いました。というのも、弊社は『日本の文化を紡ぐ』というミッションを掲げて事業に取り組み、おかげさまで現在は数多くの案件のご相談をいただきますが、そのミッションからすれば商業施設におけるテナント出店というのは縁遠いものであるからです」
バリューマネジメント株式会社 代表取締役社長 他力野 淳氏。
その他力野氏の考えを変えたのが、ある一言だった。
「ご担当の方から『新たな銀座をつくっていきたい』ということをお話しいただきました。
確かに、今銀座という街があって、そこにはさまざまな歴史があって今に至るという流れがあるわけですが、その歴史の中で銀座という街が果たして来た役割は時代に合わせて変化をしてきたと思うのです。
そして、見方によっては、銀座という街がこれまで果たしてきた役割はすでに終わっていて、新しい銀座に向けて生まれ変わろうとする変革期にあるとも考えられました」
たしかに、ここ数年で銀座を取り巻く環境は大きく変わった。今、銀座を歩けば日本語よりも中国語や韓国語、英語が聞こえてくる。銀座の街に並ぶ店の顔ぶれは大きくは変わらないが、並ぶ商品は、客層の変化に合わせて確実に変わった。
急増するインバウンドで銀座の街は着実に変化している。
「パリのシャンゼリゼ通りやニューヨークのマンハッタンのように、“銀座”という町の名は世界に知られています。そのような場所は日本に銀座以外はありません。増え続けるインバウンドのことを考えても、銀座はとても重要な場となるでしょう。
私たちは再生のほかに街の活性化事業にも取り組んで来ましたが、銀座の街の活性化ということを考えるとGINZA SIXというのはこの上ない場であると考えました」
「ザ・グラン銀座」への出店が、GINZA SIX通じて、銀座の街の活性化につながっていく。エリアの活性化という点では、バリューマネジメントはこれまでも数多くの実績を持っている。
食というコンテンツを中心に
日本の文化を世界に発信する
ところで、バリューマネジメントはGINZA SIXの「ザ・グラン銀座」においてどのような取り組みをしていくのだろうか。
「取り組んでいきたいのは、文化の発信ですね。それも表面的なものではなく、地域に根ざした、本質的なものを振り返ってもらえるようなきっかけになるようなことです。
例えば百貨店では北海道展とかを開催すると多くの人たちが集まってきますが、もう一歩踏み込んだアプローチがあっても良いのではと思うのです。
北海道の、本当に地元でしかとれないもの、食べられていないようなものを持ってきて、さらに、それを地元の職人ではなく、プロのシェフの手で食材を輝かせて提供する。それをシャンパン片手に…という北海道展があっても面白いかもしれません」
「私たちはこの銀座という日本で最もインパクトが強い場所で、日本の文化を発信していくという機会を得ることができました。
食というコンテンツを中心にして、それを世界に発信していきたいですね。そして、それがきっかけとなって、ザ・グラン銀座にいらっしゃったお客さまが、地方に行く流れを作り、地域活性化を生み出していきたいですね」
「日本を代表する街「GINZA(銀座)」から、日本の文化を世界に発信する。」 壮大なプロジェクトが、これからはじまる。
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「薫り」だけを提供するメニューや、12席限定の割烹スタイルフレンチ、ダイニングでは日本全国を1年かけて食すメニューなど、実にユニークでコンセプチュアルな食文化の提案を予定しており、高層の大窓から見下ろす銀座の街は美しく、大人の社交場として、銀座の新たな顔になることを目指している。