今年3月末、奄美大島を初めて訪れました。東京からは羽田と成田からの直行便がありアクセスは非常によくなっています。ダイビングスポットとして有名な奄美大島ですが、ここに車椅子を利用する障害者専門のダイビング施設がオープンしたというので、オープン前の視察に。これまですでに存在してもよさそうな施設ですが、日本では初めてと聞いて行って参りました。
オープン前の体験ダイビングに同行していただいたのは、パラリンピック・シドニー大会でバスケットの銅メダリスト、増子恵美さん。空港には車椅子でも楽に乗り降りできる専用ワンボックスカーが迎えに来ていました。
施設までは奄美大島空港から車で南に1時間40分、さすがに佐渡島の次に大きい島というだけあって、かなりのドライブが必要です。
辿り着いたのは瀬戸内町清水のビーチ、対岸は加計呂麻島です。新たな施設は「ゼログラヴィティ清水ヴィラ」。「清水」は“シミズ”ではなく“セイスイ”と読みます。
明るいイエローのコの字形ロッジ風の建物はすべてバリアフリーで、ツインタイプの部屋が4つ用意されています。正面玄関の前にはBBQもできる歓談スペース、正面から入るとダイニングルームで、左手には天候が悪い時にも楽しめるようにカラオケルームがあります。
ツインの部屋はシンプルなスタジオタイプで、バスルームはシャワーのみですが、20万円以上かけたトイレは着座するとクラシック音楽が流れるという優れモノです。(湯船につかりたい方には別室でお風呂の部屋が用意されています。)アクティヴィティのほか、食事、ドリンクなどオールインクルーシヴシステムとなっています。
ランチのピザは絶品で地元の人や観光客も立ち寄る大人気メニュー。
増子恵美さんは2000年シドニーパラリンピックの車イスバスケットボール銅メダリスト
さて、ゲートを出ると、ビーチの手前にトレーニング用のバリアフリープール(全長9m、深さ最大2.5m)があります。ビーチから飛んできた砂などの汚れを除去するクリーニングロボットも入り、万全の体制です。ここで専門のアシスタントと共に水に慣れる訓練を行ない、実際の海に入ることになります。
車椅子のまま海に運んでくれる船は特注の専門船(全長13.5m、総トン数14トン)で、カタマラン(双胴)艇の後部には椅子に乗ったまま海に電動エレベーターで降りることができる装置が装備されています。もちろん船上はバリアフリーで車椅子のまま海から上がって温水シャワーを浴びることもできます。水深5~10mの透明度の非常に高い海での体験ダイビングは、障害者にとっては無重力を体感できるまさに夢の世界でしょう。
今回はトレーニングの時間が足りず、スノーケリングのみの体験となった増子さんも「次回はぜひダイビングにも挑戦したいですね」と無重力の素晴らしさに感激されていました。
そんな障害者への夢をプレゼントしてくれたのは、医療関係のビジネスで成功を収めた鳥畑純一さん(同施設代表理事)。自らもダイビングを楽しむ中、およそ25年前、車椅子障害者にも重力の制約から解放される無重力の世界を愉しんで欲しいと、このアイデアを長い間、したためていたというのです。
鳥畑さんがこの事業に注ぎ込んだ私財は約2億5千万円。夢の実現を仲のよい多くの友人たちがサポートしてくれました。障害者スキューバ協会(HSA)のインストラクター資格保持者も揃えて、安全面では万全のサポート体制を敷いているとのことです。
ひとりの素朴なアイデアがこれから多くの車椅子障害者の夢を実現していくはずです。
一般社団法人ゼログラヴィティ「清水ヴィラ」
予約受付中
空港送迎付き2泊3日で13万円から。
鹿児島県大島郡瀬戸内町清水122番地
TEL:0997-76-3901
http://zerogravity.jp/