フードコートの店は、「東京グリル」と看板が出ており、主に焼き鳥、焼き肉、牛丼などが主なメニューである。試食で買った焼鳥丼は、出汁の味もなく、ただ甘しょっぱいだけ……。とても食べられたものではない。経営者は中国人か台湾人だと推測される。何しろ、この手の店は枚挙に暇がない。
ロスの郊外にも、多くの和食店が立ち並んでいる。その中の一件、「寿司ビストロ 善」に入ってみた。寿司カウンターには日本人の板前さんがおり、“ここは期待できる!”と心の中で叫んだが、板前さんと話してその期待はあっけなく崩壊。
板前は鈴木さんという東京の人。調理師免許は持っているが、日本で寿司は握ったことがない……、という。
“エ~ッ!”じゃ、東京で何をしていたのか? 持ち帰り弁当店で働いていたという。この店の経営者は韓国人。日本語はカタコトしか話せないと聞いた。
左下の写真は、「寿司ビルトロ 善」のお好み寿司、10ドル(1200円)であった。
決して安くないし、盛付も……? のレベル。まぁ、強いて言えば場末の回転寿司並かな……。悪いけど……。鈴木さんに聞いてみた。
「日本食材を使用していますか?」答えは予想通り。「日本食材なんて、とても高くて使用できませんよ!オーナーに怒鳴られますよ……」であった。
右写真は、帰りに立ち寄ったオーガニックスーパー「Wild Oats Market」の豆腐売場である。米国では、オーガニックスーパー(自然食品スーパー)は大規模チェーン店に育っており、当店も全米に2300店を展開する。
その売場では、「豆腐」や「納豆」、「おでん」や「佃煮」、「梅干し」「海苔」「日本茶」など普通に売られている。が……、しかし、それらのほとんどが米国内製か、海外製品の輸入である。
海外といっても、日本ではない。中国、韓国、台湾、タイ、ベトナムなどアセアン圏、ブラジル、アルゼンチン、ペルーなどの南米諸国である。とりわけ南米は、日系移民が日本食を食べているので、その製造ノウハウが生かされている。
これらの日本風食品の原材料は、日本のように安全安心に過剰とも言えるほど配慮された食材ではない。日本では絶対に使わない「遺伝子組み換え大豆」などが、「Tofu(豆腐)」などに使われているようである。
日本料理の代表である寿司や豆腐でさえ、この程度である。
ゆえに日本食材の輸出が伸びているのは、海外のナンチャッテ和食店が購入しているわけではない。第5回で述べたように、“豊かになったアジアの富裕層が購入”しているのが真実なのだ。
表―1 ジェトロが、2013年に海外で実施した日本料理のイメージ
上記調査は、2013年12月にモスクワ、ホーチミン、ジャカルタ、バンコク、サンパウロ、ドバイの各都市、10~50歳代それぞれ500人、計3000人を対象に行なわれたものである。やはり定番、寿司・天ぷらなどに人気がある。
最後にダメ押しのような写真をお見せしたい。ラスベガス郊外で訪問した「YM寿司&グリル店」である。
寿司はもちろん、うどんからラーメン、レバニラ炒め、焼鳥丼、てりやきハンバーガーまで、これでもかという具合に和風メニューが並んでいる。典型的なナンチャッテ和食店である。“経営者は韓国人!(Owner`s korean)”だと従業員から聞いた。
フードビジネスカウンセラー
高桑 隆
㈲日本フードサービスブレイン 代表取締役
Takashi Takakuwa
1950年北海道生まれ。神奈川大学経済学部経済学科卒業。74年、公開経営指導協会小売業通信教育「売場管理実務講座」文部大臣賞受賞。75年、㈱デニーズジャパン創業期入社。99年、㈲日本フードサービスブレイン設立。2000年居酒屋トレーニングセンター「長鳴鶏」を開店、脱サラ・独立開業支援。01年サッポロビール21世紀会(帝国ホテル)他、年間30回以上講演実施。02年法政大学にて「店舗独立開業講座」を開設、06年度第6期まで開講。04年服部栄養学園調理師専門学校で、フードマネジメント科目担当。05年産業能率大学非常勤講師に就任、ショップビジネス科目担当。06年桜美林大学非常勤講師に就任、フードサービス産業論担当。08年コンサルタント会館レストランマネジメントコンサルタント講座開設。