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ホテルリッジ インタビュー

まだまだ道半ば。FB戦略を練り上げ、究極のデスティネーションホテルを目指す

2025年03月04日(火)
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左からカリフォルニアテーブル 支配人 新屋 嘉紀氏/カリフォルニアテーブル 料理長 槙 建二氏
左からカリフォルニアテーブル 支配人 新屋 嘉紀氏/カリフォルニアテーブル 料理長 槙 建二氏


大塚食品や大塚製薬を擁する大塚グループの系列ホテルとして、2006 年に開業したホテルリッジ。瀬戸内海国立公園内にある鳴門公園に位置するスモールラグジュアリーホテルだ。2019 年3月にリニューアルオープンし、全室アウトドアテラス付きへと生まれ変わっている。オーシャンビューの絶景と心をも潤す料理は多くの宿泊客を魅了し、大手予約サイト「一休.com」では四国エリアの口コミランキングで第2位に輝いている(2025年1月末日現在)。ホテルのコンセプトやFB(料飲)戦略における特徴、現状の課題と今後の目標などを洋食部門を担うカリフォルニアテーブル支配人の新屋嘉紀氏、料理長の槙建二氏の両氏に語ってもらった。
 

 

五感の至福を追求する、 アクティブシニア世代御用達の隠れ宿

 ホテルリッジは、鳴門海峡を望む7 万坪もの高台に贅奏・洋奏・和奏の3 つのスタイルから成る合計9つの客室と数寄屋造りの和食ダイニング「万里荘」、カリフォルニアキュイジーヌの名店「カリフォルニアテーブル」、SPA 施設を構えている。

 ホテルのコンセプトは、「五感の至福」。瀬戸内の静かな海を眺め、光と風、日常では聴くことのできない贅沢な自然が奏でる音と潮、木々、陽、地にあふれる匂いを感じ、旬の食材を活かしたお料理で至福の時を提供します、と謳っている。

 それだけに、食には重きを置いている。「地産地消を心がけ、地元・阿波の食材をふんだんに使っています。もちろん、お客さまによっては好き嫌いもあるので、それも加味して迅速かつ柔軟に対応できるようにしています。さらに付け足すとすれば、自分が自信を持ってお勧めできる食材を美味しく作り上げ、ご提供することを心がけています」と料理長の槙建二氏は語る。

 日本全国がインバウンドに沸く中、ホテルリッジでは積極的な取り込みは行っていない。むしろ、「唯一無二の環境の中でゆったりと心と体を浸したい」と関東や関西などから訪れてくれるアクティブシニア世代のお客さまをメインターゲットとしている。それだけに、繁忙期と閑散期、平日と週末の込み具合にあまり差がないのが特徴だ。

 その人気の要因を支配人の新屋嘉紀氏はこう捉えている。「観光のついでに泊まっていただくのではなく、ホテルリッジを目当てに来られるお客さまが圧倒的に多いです。それと、ロケーションの素晴らしさです。一度来ていただければ十分に実感してもらえます。高台から瀬戸内海を見下ろしたときの景色と贅を尽くした食事が一番の売りになっています」。

 

 

地元・徳島産の旬の食材とゲスト ファーストのサービスにこだわる

 多くのホテルではFB 部門が苦戦を余儀なくされている。そうした中、ホテルリッジは「FB」に絶対的な自信を持っている。どのような戦略で臨んでいるのか。槙料理長が強調したのは旬の食材へのこだわりだ。

「夏はあわび、冬は伊勢エビと決めています。徳島は鳴門わかめが有名です。特産品の一つとして位置づけられています。そのわかめを食べて育ったあわびなので、ものすごく美味しいんです。それをできるだけ県外から来ていただいたお客さまに味わってもらいたいと思っています。伊勢エビは、本家である三重県も有名ですが、徳島の伊勢エビは身がしっかりしている上にとても甘くて、しかも値段的にもお手頃です。そういった地元ならではの旬の食材でお客様をおもてなしすることを日々考えています」
 槙料理長には他にもお薦めの食材がある。それが、徳島産のプレミアムしいたけ「てんけいこ」だ。その直径は、15 センチ。通常のしいたけの数倍もある。しかも、肉が厚い上に旨味成分も通常の3 倍。焼いても蒸しても絶品とあって、入荷できたときには必ず付け出しとして添えているという。

 少しでもお客さまに喜んでもらいたいという姿勢は、価格設定にも表れている。食材の原価率が多少上がることがあっても、他の経費をできる限り抑えてお客さまに還元する姿勢を貫いている。高い満足度を追求できるのも、資本力のある大塚グループのホテルだからこそなのかもしれない。

 当然ながら、和食・洋食とも宿泊客から絶大な支持を得ているが、カリフォルニアテーブルでは、さらにランチの一般開放も行なっている。最高の旬の素材を吟味したカリフォルニアキュイジーヌのランチメニューを楽しめるとあって、鳴門市内にある大塚国際美術館を訪れるツアーコースに組み入れられており、予約が取れない状況にある。

 ホテルリッジのこだわりは、料理だけではない。サービスにおいてもお客さまに笑顔でもてなすことを徹底している。「そのための環境づくりや雰囲気づくりが私の役割です。ただ単にお客さまのもとにお料理を持っていくのではなく、料理名はもちろん、その調理法もできるだけ丁寧にご説明しています。ただ、お客さまにもTPO があるので、何がお客さまにとって良いサービスとなるのか、その場その場ごとに自分たちで考え臨機応変に対応してもらうようにしています」と新屋支配人は語る。

 それぞれの現場を担う人材は順調に育成できているのであろうか。部屋数は9つとはいえ、ラグジュアリーホテルに対するお客さまの期待は高いだけに気になる。まず、サービス面では「慣れてくるのが怖い」と新屋支配人は指摘する。

 客室が9つしかないとないとなると定員数は18。少人数への対応ゆえ、お客さま一人ひとりに目が行き届きやすくなるのはメリットだが、どうしても徐々に「このレベルで良いのでは」と自分なりに線を引いてしまいかねない。そうなると、もはやそれ以上の成長はないというのが新屋支配人の考えだ。だからこそ、どんな時でもお客さまに真摯に向き合うことをスタッフには促している。もちろん、ホテルとしてもできることはやっている。例えば宿泊客に関しては、スタッフが知り得たさまざまな情報も記録しリピートにつなげている。もう一つは、良い人材を作るためにも経営層がもっと勉強しなければいけないと自覚し、さまざまな施策に取り組んでいる。

 一方、料理スタッフに対して槙調理長は、「あまり細かな指示は出していない」と指摘する。その代わり、メニューはできる限りわかりやすくする、初めての食材であればお互いに聞き合えるよう心掛けているという。

 育成と同様、課題となるのが人材の確保だ。ホテルリッジも他のホテルと同様に人材不足に悩んでいる。特に深刻なのは、若手世代の確保だ。専門学校でサービスを学ぶ生徒が減少していることもあって、人材は取り合い状態になっている。

「経営陣とも、いろいろと相談していますが、現状はなかなか難しいです。やはり、最優先すべきは環境づくりです。スタッフが一人ひとりやりがいを感じながら、楽しく、そして安心して仕事をしてもらうために何をすれば良いのかを常に考えていかないといけません。その中で皆が成長し、お客さまに喜んでいただければ、お客さまの裾野は自ずと広がっていきますし、ホテルの評判も高まり人材の定着につながっていくと思っています」と新屋支配人は述べる。

 ホテルリッジ全体で見ると、他にも課題がないわけではない。認知度の向上だ。業界関係者や一部SNSでは満足度という点で一定の評価を得ているものの、まだまだ一般のレベルにまでは浸透していないのが実情だ。「いかにホテルの露出を増やし、知名度を上げていくかが我々の課題であり、一番の目標です」と新屋支配人は強調する。デスティネーションホテルとしての地位を目指すホテルリッジの挑戦は、さらに続いていく。

 


HOTEL RIDGE
 

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