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酒の宿 玉城屋 四代目 代表 山岸 裕一氏

110年の歴史ある旅館を酒と食を楽しむ宿に大変革。 十日町を多くの人が集まる魅力的な地域に

2024年10月28日(月)
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 有馬温泉や草津温泉と並ぶ日本三大薬湯の一つ、松之山温泉。その地に明治44年(1911年)に誕生し、110年以上の歴史を持つ老舗旅館「玉城屋」は現在の代表である4代目の山岸裕一氏によって “いわゆる田舎の温泉地にある老舗旅館” から “地域の食の知恵とフレンチの技術が融合したローカルガストロノミーと日本酒から生まれる新しい体験を提供する宿” へとコンセプトを変更。屋号を「酒の宿 玉城屋」として生まれ変わり、2020年に発行された『ミシュランガイド新潟2020特別版』ではフランス料理一つ星を獲得し、宿泊単価の大幅な向上を実現するなど、着実にその実績を積み重ねている。2016年、34歳の時に引き継いだ家業を大きく転換し、山岸氏は未来を見据え、今後何を目指すのか。

 

 
レストランで修行の後にビジネスの世界でも活躍。
そして、家業のある新潟・十日町へ
 
松之山温泉は有馬温泉や草津温泉と並ぶ日本三大薬湯の一つ。その松之山温泉にある玉城屋は2016年、4代目である山岸裕一氏が就任し、2018年に行なわれた大規模リニューアル以降大きくそのスタイルを変えた。
 
「以前は一泊二食付きで1万2〜3千円という、いわゆる田舎の温泉地にある普通の旅館でした。それを2016年に私が4代目として受け継ぎ、2018年のリニューアルを経て地域の食の知恵とフレンチの技術が融合したローカルガストロノミーと日本酒を提供する『酒の宿 玉城屋』として生まれ変わり、現在に至っています」(「酒の宿 玉城屋」 四代目 代表 山岸裕一氏、以下同)。
 

酒の宿 玉城屋 四代目 代表 山岸裕一氏
酒の宿 玉城屋 四代目 代表 山岸裕一氏

 山岸氏は若い時から自身が将来的に玉城屋を受け継ぐという意識はあったという。一度は地元を出て大学は横浜国立大学へ進学し、在学中は有名日本料理屋で修行も経験。卒業後はエコール辻東京(調理師学校)を経て料理人やソムリエとして経験を積んだ。また、ビジネスの世界も経験すべく飲食の世界を離れ、リクルートの経理統括室で勤務の後不動産関連事業を手掛けるエーディーワークスでは経営企画室の財務経理として東証一部上場プロジェクトや資金調達プロジェクトの経験を積むなどし、2016年7月に玉城屋4代目として地元である新潟・十日町市へ戻ってきた。

「8室という小さな家族経営の旅館でしたので。戻れば料理も接客も、裏方にも自分が関わることは分かっていました。実際、両親も料理を作っていたのを見ていましたし、私自身も料理やお酒も好きでしたので、十日町に戻って最初の一年目はまさに料理も含めて何でもやるという感じでした」。
 

「新潟の食と酒を楽しめる旅館」を実現。
その後も止まらない構想とアクション
  
 山岸氏が自身の経験をもとに新たな玉城屋の構想を考えながら必死に模索して毎日を過ごす中、とある大きな出会いを山岸氏は得ることに成功する。2017年末、新潟・十日町出身で現在は12年連続でミシュラン二つ星を獲得している東京・六本木のフレンチ「Restaurant Ryuzu(レストラン リューズ)」の飯塚隆太オーナーシェフの下で4年半ほど修行をしていた現在の料理長 栗山昭氏が、玉城屋に新料理長としてやってくることとなったのだ。それをきっかけに、玉城屋は大きな変化の時を迎えることとなる。
 

料理長 栗山昭氏
料理長 栗山昭氏

 
「『新潟の食と酒を楽しんでほしい』――それが先代から宿を引き継いで以来、私の玉城屋に寄せる思いでした。栗山が来てくれてからは私は接客と経営に集中することができるようになり、2018年の3月、約2カ月の改装期間等を経て大規模なリニューアルを実施。夕食をフランス料理のフルコースに一新し、『酒の宿 玉城屋』として新しい2つの客室とともに生まれ変わりました。
 その後も客室の改装なども進め、客室に露天風呂や貸し切り風呂を備えることで単価も大幅に上げることができました。一部、客室にお風呂のない部屋がありますが、それ以外の部屋であれば一泊二食付き、2名宿泊で10万円というのをターゲットとして取り組んでいます。
 そして大きく変わったのは、十日町に来るからそこにあった玉城屋を宿泊先として選んでいただく、ではなく、玉城屋でまさに新潟の食と酒を楽しむために十日町まで足を運んでくださるお客さまが増えていることで、これは当初から目標に掲げていただけにとても嬉しく思っています」。
 

新潟 松之山発「里山キュイジーヌ」 地元の稀少地酒とのマリアージュ
新潟 松之山発「里山キュイジーヌ」 地元の稀少地酒とのマリアージュ

 
 まずは玉城屋を当初目指していた方向に進めることはできた。それでも山岸氏はその歩みを止めることはない。「酒の宿 玉城屋」プロジェクトと同時進行で十日町市が所有し経営難に陥っていた施設「おふくろ館」を買い取り、「Hotel 醸す森 [kamosu mori]」としてシンプルな客室からヴィラまで幅広い9室の客室とイタリアンレストランを備えるホテルを2018年7月末に開業。さらに、既存の廃業した施設の取得・再生も目論んでいる。
 

Hotel 醸す森 [kamosu mori] レストラン
Hotel 醸す森 [kamosu mori] レストラン

「まだやりたいことはたくさんありますね。近々、先ほどお話をした醸す森に隣接する形で玉城屋とは別のチームで酒蔵を作るプロジェクトを進めています。酒造免許の取得などで来年には開業できると思うのですが、そこで酒造りの体験を提供してその人オリジナルのお酒を作れるようにしたりといったことを考えています。まだ十日町にはインバウンドの旅行者が少ないので、そうしたことがフックになって盛り上げっていったらと考えています」。
 
 
今後の成長の鍵の一つはインバウンド。
新潟の酒と食の魅力を十日町から世界へ発信したい
 
 十日町・松之山温泉の課題であり、一方で伸びしろとも言えるのがインバウンドゲストの少なさだ。玉城屋でも通年で約1割程度だという。将来的には海外からのゲストを増やし、迎えることを目的に山岸氏はAlisの提供するTabiCall(旅コール)を先んじて導入することを決定した。
 
「AlisのTabiCall(旅コール)の多言語対応サービスも魅力的ですが、まずは海外からのゲストを増やすためにTabiCall(旅コール)を通じた海外の旅行代理店などと直接商談ができるサービスには大きな興味を持っています。海外への営業的な活動の開始は今後取り組む課題ではあったのですが、直接はたらきかけられると聞いて魅力を感じました。
 この十日町・松之山温泉でもインバウンドのポテンシャルの大きさというのは感じています。これまでも海外のメディアの方やインフルエンサーのような方が来てたまたまうちのことを紹介してくれたことがあったようなのですが、それだけで急に海外からのお客さまが増えるということが何度かありました。先日もシンガポールのメディア関係の方が玉城屋をご紹介してくださったことで急にシンガポールからの予約が増えました。玉城屋や醸す森は小規模な施設ですが、尖ったことをやっているのでそれがいいなと思った方はすぐ動いてくださるようで、そのインパクトも小さくありません。
 このエリアは海外のお客さまがフラっと立ち寄るような場所ではないので、こちらから何かしらのアクションを仕掛けていかないといけないと思っています。そこで、AlisさんのTabiCall(旅コール)は魅力的でした。
 また、インバウンドのお客さまに来ていただけるようになれば、その対応も重要です。多言語対応、AIによる業務効率化など、TabiCall(旅コール)のような仕組みがあることはすごく安心なのかなと思っています。まずは玉城屋から開始し、今後仕組みを構築できたら他施設にも展開をしていこうと考えています」。
 
 
地域の仲間たちと、地域の魅力を発信。
多くの人が集まる十日町に
 
 山岸氏が目指すのは、自社の発展だけではない。地域の仲間、それぞれのプロフェッショナルの力を集結して地域の魅力を世界に発信していくことだ。
 
「私が追求をしていきたいのは新潟の酒と食を発信する旅館やホテルなどのグループを通じてこの地域の魅力を世界に発信していくということです。
先ほどお話しをした酒蔵作りは、私は酒は常に学んでいますが酒蔵を作ることはできません。また、魅力ある料理を提供するには栗山のように腕のある料理人が必要ですし、料理人が魅力的な料理を作るためには使う食材を育てる生産者の方々の協力も必要です。これは雇用の創出にもつながりますし、旅行者だけでなく十日町で働きたいという人が増えるきっかけになればとも考えています。場所柄簡単ではないことは理解していますが、理想的には草津のように若い人たちも集まるような地域づくりもしていきたいですね。
 私たちはグループとして、地域の仲間たちと協力をしながらこの地を盛り上げて魅力を発信し、十日町を目的地に日本国内だけでなく世界中から多くの人々がやってくるようにしていきたいと考えています」。
 
 
松之山温泉「酒の宿 玉城屋」
https://www.tamakiya.com/
 
Hotel 醸す森[kamosu mori]
https://www.kamosumori.com/
 
Alis 「TabiCall(旅コール)」
https://www.tabicall.com/
 

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