森トラスト㈱ 代表取締役社長 伊達 美和子 氏
2020年9月29日、森トラスト㈱代表取締役社長 伊達美和子氏が、「令和2年 都道府県地価」についてコメントを発表した。
日本のトップデベロッパーである森トラストのリーダーが、コロナ禍での地価、オフィスを中心とした賃貸不動産状況、またリゾートを主とした観光業へのビジョンなどまで言及した当コメントは、各界から注目を集めている。
HOTERES ONLINEでも、そのコメントを全文掲載する。特にウェルネスに関してのコメントは非常に興味深いものではないだろうか。
「令和2年 都道府県地価」のコメント
(森トラスト株式会社代表取締役社長 伊達 美和子)
■商業地の全体感 商業地の地価は、全国平均で5年ぶりに下落に転じた。三大都市圏(東京圏、大阪圏、名古屋圏) の平均では0.7%上昇し8年連続の上昇となったが、上昇幅は縮小した。 地方圏の平均においても昨年の上昇から下落に転じた。一方、地方四市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)においては上昇を継続し、6.1%の上昇となったが上昇幅は縮小した。さらに、観光需要が高い京都、沖縄においても、上昇幅は縮小したものの7年連続の上昇となった。
■背景と具体的な現象 東京都心部のオフィス賃貸市場は、新しい働き方への対応に伴う移転ニーズの高まりが見られる。新型コロナウイルスの影響による空室の増加が見られつつあるものの、好立地については一定の稼働率が維持されるものと予想される。
売買市場では、郊外地における需要にかげりが見られる一方で、千代田区、中央区、港区、新 宿区などの需要は依然として高い。また、オフィスビルの規模に着目すると、大規模オフィスの需要が特に高まっている傾向がある。投資家の不動産投資意欲についても大きく損なわれておらず、マーケットの全体感としては今後も堅調な推移が期待される一方で、立地と規模の両面から不動産価値の二極化が進むと予想される。
地方圏では、沖縄県宮古市や長野県白馬村といった魅力的な観光資源を備えたリゾートエリアにおける地価の上昇幅が大きく、不動産需要は堅調であった。
■今後の見通しと課題・展望 新型コロナウイルスの影響によって急速にテレワークが普及し、今後もオフィス勤務とテレワークを併用した働き方が継続されていくと見られる中で、次世代のオフィスのあり方が模索されている。特に、テレワークにはメリットがある一方で、業務生産性の低下に加え、コミュニケーションの質や社員の帰属意識の低下に対する課題意識を持つ企業も見られており、リアルな場の重要性も再検討されている。また、出社時の感染対策なども考慮したレイアウト見直しのため、より広いスペースを要望する企業も出てきている。供給側は、先進技術の導入などによってサービスの充実を図り、リアルなオフィスの付加価値を高めていくことはもちろん、テナントからの多様なニーズに対応できる柔軟性のあるオフィス賃貸のあり方を提案していくことが求められる。観光業には未だ逆風が吹いているが、地方リゾートにおいては国内観光客数が少しずつ回復傾向にあり、直近の連休期間には首都圏の観光地にも賑わいが戻るなど、人々の観光に対するニーズが消失していないことが明らかとなっている。事業者側と観光客の双方による万全な感染対策 によって、ウィズコロナ時代の新たな観光のあり方を確立していくことが求められる。また、心身の健康不安が世界的に高まる中、温泉や和食など日本独自のウェルネスが世界から 改めて注目されている。さらに最近では、心身の健康向上に寄与する新しい働き方の一つとして ワーケーションも認知されつつあり、今後のライフスタイルにおいては、働く場所、暮らす場所、憩う場所の境界が曖昧になっていくと予想される。地方都市やリゾートにおいては、今後ワーケーションやウェルネスへの需要拡大を見据えた、新しいプランやサービスの拡充が求められる。海外における訪日ニーズも高く、将来的にはインバウンドのⅤ字回復の可能性は高い。コロナ 禍が収束した際のインバウンドの呼び込みは世界各地の競争となるため、国内の観光業が抱えている課題の克服、および観光地の魅力向上に取り組み、将来に備えておく必要がある。当社グループは、今後も都心や地方における様々な不動産開発や日本独自のウェルネス体験の提案を通じて、新時代のリアルな場を提供していく。