HOTERESスタッフがお届けする新型コロナウイルス関連のニュース。今回は栗山がお送りします。
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英雄だという自負を持ち目の前の仕事を
ここで日本における自治体対応の差異について考えてみよう。南京市において政府から補償金が望めなかったのに対して、我が国におけるホテル受け入れの自治体対応としては前述したとおり、「一棟借り上げ方式」を採用されている。
また、宿泊利用をする軽症者等側の立場から考えてみても、厚生労働省が4月6日に示した事務連絡「『新型コロナウイルス感染症の軽症者等に係る宿泊療養及び自宅療養の対象並びに自治体における対応に向けた準備について』に関するQ&Aについて」にて、基本的に「食費やホテルの滞在費はかからない」と示した。
つまり、受け入れホテル側、宿泊利用をする軽症者等側、両面から日本は国の支援を受けているのだ。
むろん、支援の有無でどちらの方が有価値であるという議論ではない。大切なのは、日本よりも重い状況下に置かれた南京のホテリエたちがどのようにモチベーションを保ったのか、と想像することだ。
金銭的な不利が圧倒的に予測できる南京の受け入れホテルは何故に自治体の要請に応じることができたのだろうか? それは、現地ホテルオーナーが述べていたように、「社会的責任を果たす」という言葉に端的に現れているだろう。良い悪いではなく、南京市のホテル人と日本人における社会的責任に対する意識の差がここに示されている。
あえて述べるまでもなく、二次被害を防ぐためにも受け入れホテルの皆様は立派な仕事をなされている。しかしながら、経営者、部門長、一般スタッフへと肩書きが下ると、どうだろうか。過酷な現実に立ち向かう事態で、余裕がなくなってくるのではないだろうか。古今東西の近代戦において疑念がないとされているのが、「先の見えない消耗戦」ほど、体力と精神を損なう場面はないことだ。
南京市においてはSARSという前例が背景にあり、「自分の仕事が確実に人命を救う」という実感と共に業務に当たっていたものと思われる。それは経営陣からチームの隅々に渡るまで、確固たる姿勢で励んだからこその行動であり、その結果となったのだ。
南京市のホテリエたちに学ぶべきものは、紛れもなくその精神性だろう。「ホテルのみなさまに助けられた」という市民の声もあり、そうした社会的な信用を受けて仕事への誇りが生まれているのではないだろうか。
信用、思いやり、誇り。これらはともすれば「綺麗事」とされやすい言葉だが、それなくしては我が国の政府が掲げている「SDGs」(Sustainable Development Goals 持続可能な開発目標)も達成できやしないだろう。しかしながら、「自分の仕事に誇りを持つこと」はスタッフ個人ではまだ足りない。
社会的責任を果たすために経営陣、チームが一体となって適切なコミュニケーションをとることで、プライドは育まれていくものである。そうして成長したチームはSARSを乗り越えた南京市民のように、持続可能な組織として大きく発展を遂げるのではないだろうか。
もし実際に受け入れホテルで働く人々がこの文章を読んでおられるとしたら、少なくとも自分の仕事が「命を救う立派な仕事をしている英雄」だと考えていただきたい。バンクシーが絵画に示したとおり、スパイダーマンやバットマンよりよほどあなたがヒーローだ。おそらくはあなたの仕事を受けた軽症者等の皆様はそう考えられているはずだ。少なくとも筆者はそう考えている。
https://www.instagram.com/p/B_2o3A5JJ3O/
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