深刻化する人材不足。ことにサービス業への求職人数が年々減少していることは、厚生労働省の調査データでも読み取れる。「一般職業紹介状況」によると、2017 年 1 月時点の有効求人倍率1.36 に対し、宿泊業を含む「接客・給仕の職業」の有効求人倍率は 3.77 倍。つまり約4 件の募集に対して1 人しか応募者がいない売り手市場というのが現状だ。小誌ではインタビューなどを通じて、さまざまなホテルオペレーターのトップに「人員の確保・維持対策」について確認してきた。東急ホテルズでは、約1年間で掲げてきた目標を次々に実践してきたという。そこで、代表取締役社長 小林昭人氏の思いと手腕を探るべく話を聞いた。
■「働きやすく」「働きがいのある」「働き続けられる」職場環境を目指す新たな取り組みについて。
東急ホテルズでは従業員満足度調査(ES 調査)を毎年実施しています。その結果をもとに、労働条件や処遇の改善を図りながら、職場風土作りを進めたいと考えています。具体的には、東急ホテルズで働くうえで、大事にするキーワードとなる「職場ポリシー(仮称)」を定め、過去のしがらみや従来の仕事の仕方を変え、新しい職場における約束ごとを言語化し、全従業員と共有したいと思い、現在そのプロジェクトを進めています。また離職率軽減を目標に、処遇面の改善や店舗での取り組みのかいあって年々低下。2016 年度は5.9%でしたが、離職者の多くが入社後間もない20 歳代の社員でした。さまざまな事情もあるでしょうが、夢を抱いて東急ホテルズの門をたたいてくれた訳ですから、一緒に長く働き続けてもらいたいと思っています。そこで、全社的な取り組みとして、入社後3 年目までの離職率低下を目指すための指標(入社後3 年目離職率25%以下)を設定し、各店舗で離職防止のための取り組みをスタートさせました。同時に、「一人当たり残業時間月間80 時間まで」「年休消化率目標50%以上」を新たに全社の数値目標として設定しました。
職場環境はまだ改善の余地が残されており、「働きやすく」「働きがいのある」「働き続けられる」職場環境を目指し、会社の風土を変えていきたいと思います。また長らく掲げてきた「食の東急」を名実ともに示すためにも、ザ・キャピトルホテル東急の加藤総料理長の執行役員への昇格をはじめ、専門職(E職)制度の創設、マザー店舗制(ホテル群を三つに分け、キャピトル・セルリアン・横浜ベイが中心で人財育成や調理人を派遣する制度)、東急REI ホテルの朝食改革(口コミ評価の上昇)などを進め、調理人のモチベーションも上がり業績も回復傾向にあると感じています。