洗練された建築やインテリアデザイン、上質なホスピタリティーを提供するホテルとして、2003 年に東京・汐留に開業したパークホテル東京は、開業10 周年を迎えるにあたり12 年に「アート」を軸にしたリブランドを行なった。「ART =空間(Atrium)、食(Restaurant)、旅(Travel)」のそれぞれのシーンにおいて、コンセプトに掲げた「日本の美意識が体感できる時空間」を提供するための試みを展開している。パークホテル東京の立役者、取締役総支配人の林義明氏に、ほかにはない独自の路線を究め続けるスピリットについて話を聞いた。
聞き手 本誌・岩本 大輝 構成 森下 智美 文 高澤 豊希
パークホテル東京 取締役 総支配人 林 義明 氏
欧米のFIT をターゲットに
命題である「単価の維持」を守る
❒ 今や「アーティストホテル」の異名もあるパークホテル東京ですが、どのようなコンセプトで運営していますか。
パークホテル東京の開業当時は、一つの流れとして「デザイナーズホテル」のブームがありました。そのトレンドの中で、コンテンポラリーでモダンなホテルを創ろうという考えが私の中にはありました。最終的にお願いしたデザイナーのフレデリック・トマ氏は、非常にモダンなマテリアルを使いながらも、フランス人特有のエスプリを効かせたやわらかみを加えることで、ヒューマンなデザインを生み出してくれました。そのためパークホテル東京は安らぎを感じることのできる、いい意味でゆるさのある空間を提供できていると思います。
開業準備の段階で取り組んだのは、ヨーロッパ、特にイギリスのリテーラーの開拓でした。私自身もロンドンに行って、現地のリテーラーのスタッフを集めて交流し、直接交渉ができるルートを開拓しました。そのルートをベースにして認知拡大を続けながら、FIT をターゲットにしたビジネスを展開してきました。結果、団体客に頼らない運営をしていくことで、開業当初からの命題である「単価の維持」を守れています。
業績については2016 年に一つのピークを迎えたと思います。平均稼働率は約80 %、ADR は2 万円超をキープすることを念頭においております。インバウンド比率は約85%で、欧米のお客さまが中心です。