“ 医食同源”をベースにレシピのない革新的なメニューを考案する
ザ・プリンス パークタワー東京では、4 月11日の開業10 周年に先駆け、スペシャリティダイニング「レストラン ブリーズヴェール」にて、3 月23 日・24 日、「美食の饗宴 デイヴィッド・ブーレイの特選料理フェア」(ディナーコース1 名3 万2000 円・サ別)を開催した。来日した同氏に、フードビジネスにおける心構えについて改めて聞いた。
聞き手・本誌 太田 進 文・本誌 木下賀文 構成・本誌 森下智美
David Bouley (デイヴィッド・ ブーレイ)氏
太田 この度の企画以前に、昨年より技術研修として、ザ・プリンス パークタワー東京の調理スタッフを受け入れていたそうですね。
ブーレイ 2 名の研修スタッフと各3カ月間一緒に働き、その人材交流が今回のイベントの実現へとつながりました。会場がある「レストラン ブリーズヴェール」はもともと、彼らのフィールドでもありますし、キッチンの仕組みなども理解してくれているので、とてもやりやすかったですね。私の部下にダニエル・チャベスというスペイン人シェフがいますが、彼は私の料理のスタイルが日本料理と多くの共通点があると言っていました。
例えば、私は料理にトマトウォーターを使うのですが、日本料理のだしがまさしく同じ考えで、それを知ったときにはその偶然にとても驚きました。トマトも昆布も同じグルタミン酸です。日本料理と甘さや塩加減なども非常に似ており、考え方も似た部分が多くありましたので、それらを見比べて高めていきました。
太田 今回のイベントに際し、食材は築地で調達されたそうですね。
ブーレイ はい。例えば初日に、デーツを薄くペーパー状にして鴨肉の下に敷きましたが、翌日は築地でデーツよりも干し柿の方がよいのではと感じ早速、試みました。実は干し柿が「今日は自分を使ってくれ」と話しかけてきたように感じたからです。さらに市場で出会った銀杏をつぶしてナッティなフレーバーを加えました。金柑を試食したときはこんなにおいしい金柑は初めてで早速、持ち帰って料理に使用しました。鴨肉と柑橘類というのはよく合いますからね。そのほか、新タケノコを見つけて添え、ソースはザクロとブラッドオレンジ…と、前日とは全く違う鴨料理を提供しました。