当企画では、有価証券報告書を公表している日本のホテル企業から14 社の、2014 年度(2015 年3 月期など)の収益性、安全性、成長性、生産性、連結財務諸表の分析および減損会計の状況などから、5 週にわたって分析結果を掲載する。
※今回、カラカミ観光㈱が加わっている
PART5 有利子負債・連結財務諸表・減損会計
●分析/平尾進一
(ホテル会計システム研究所代表/公認会計士・税理士)
長谷川江利子
(事務所スタッフ)
表8 有利子負債の分析(単独財務諸表)
ホテルの経営成績は、為替と株価との関連が大きく、消費の急減が顧客のホテル需要の減少となり、ホテル各社の売り上げが減少し損失が発生し、有利子負債や未経過リース料が問題となるので、この分析は重要である。
藤田観光㈱で、オペレーティングリース料残が343 億6560 万円と未経過ファイナンスリース料残が1050 万円、㈱ロイヤルホテルで182 億400 万円と25 億3000 万円、リゾートトラスト㈱で127 億9100 万円と20 億8800 万円、㈱ホテルオークラで76 億2300 万円と51 億900 万円、㈱京都ホテルで24 億8583 万円と1 億8451 万円、㈱鴨川グランドホテルで3 億9880 万円と3120万円、㈱帝国ホテルでオペレーティングリース料21 億800 万円、㈱ニュー・オータニで未経過ファイナンスリース料20億185 万円、㈱ニュー・オータニで同じく36 億6200 万円、表8 に記載の有利子負債以外にも負担となる巨額債務がこれら9 社にはある。
JAL ホテルズが無借金・無リースで
3 年連続1 位、無借金の帝国ホテルが2 位
㈱JAL ホテルズは、2011 年度末で無借金を達成、12 年度でリース料残ゼロにできたため№ 4 ~ 6 が1 位である。
㈱帝国ホテルは無借金であり№ 4 ~6 で㈱JAL ホテルズと共に1 位だが、解約不能のオペレーティングリース料の未払残高があるため、2 位となった。同社は上場企業でもまれな無借金経営を20 年以上続けており、№ 5 と№ 6の比率で6 年前までは、約15 年間連続完全に1 位であった。しかし2008年度に114 億8700 万円も解約不能のオペレーティングリース料残高が発生し、14 年度末では21 億800 万円あるため、これを借入金とみなして№ 5と№ 6 の比率を計算すると、それぞれ4.0%と0.5 倍で共に2 位となる。
前回1 位のホテル、ニューグランドと
ホテルオークラが3 ~ 4 位
㈱ホテル、ニューグランドは、2014年度は大規模改修工事のため借入金15 億円が発生し、№ 5 の比率が30.5%で未払リース料ゼロを考慮して実質3 位となる。また、本館客室をはじめレストランや宴会場も営業休止となり経常損失となったが、これは工事期間中の特殊要因である。
同社は83 年間、横浜の山下公園前の本店のみでのホテル経営に徹していて、拡大策を採らないことが、十数年間以上「安全性の分析」と「この分析」で上位を保っている理由と考えられる。拡大よりも従業員教育を重視しており、地元横浜では同社ホテルへの信頼が厚い。
㈱ホテルオークラは、表8 では№ 5、№ 6 の比率ともに3 位であるが、未払リース料計127 億3200 万円を考慮すると、37.2%と5.5 倍でともに4 位となる。同社は、2010 年9 月に㈱JAL ホテルズの株式80%を45 億円で取得して子会社にしたことなどにより、10 年度連結ベースで有利子負債が266 億円も増加、オペレーティングリース料も前期末より95 億8518 万円も増加したが、その後有利子負債を4 年連続大幅削減している。
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2014 年度 主要14 ホテル経営分析 PART5—有利子負債・連結財務諸表・減損会計
【月刊HOTERES 2015年12月号】
2015年12月25日(金)