時代を先取りするパイオニアスピリットと奉仕の精神で社会に貢献することを理念に掲げ、リースホテルを展開するリステルグループ。規模を拡大し、巨大化していくホテルチェーンが多い中、独自のコンセプトでホテル展開に取り組む。グループを率いる鈴木裕久代表取締役社長に同グループの理念と現状について伺った。
聞き手・本誌 長谷川耕平 文 アクセント 撮影 平瀬 拓
合理的発想から始まった
リース型リゾートホテル
❒ リステルグループのこれまでの歩みを教えてください。
もともとは創業者鈴木長治が1967年に当グループの前身となる長治不動産を設立したことに始まります。73 年には、当時の別荘ブームを背景にホテルの客室を区分所有にして分譲するという新しいタイプのリゾートホテル「分譲ホテル」を開発しました。これは、客室を所有者が1 年のうち数日しか使用しなくても、それ以外の日を私たちが借り受けてホテルとして一般のお客さまに提供するという合理的なビジネスモデルです。名称はリースホテルの略称としてリステルとしました。最初にオープンしたのが福島県の「ホテルリステル猪苗代」です。その後、75 年に静岡県の浜名湖、85 年に東京・新宿、88年にはカナダ・ウィスラー、92 年にはカナダ・バンクーバーを開業しています。現在グループは不動産業の㈱リステル、ホテルなどを運営する長治観光㈱、宣伝・イベント企画などを行なう㈱リステル綜合企画、ハーブや野菜を栽培する農業法人猪苗代ハーブ園、カナダのホテル事業を行なうLISTEL CANADALTD. 介護老人保健施設を運営する医療法人ケアテル、資産管理賃貸業の長治産業㈱の七つの会社で構成されています。
❒ 現況の業績に関してはいかがでしょうか。
日本国内の売り上げに関しては、特にフラッグシップホテルのホテルリステル猪苗代について東日本大震災とその後の原発事故の影響がいまだに尾を引いている状況です。ホテレス誌の特集「日本のベストホテル300」においても、震災前は50 位以内だったのが今年は105 位となっています。震災前の売り上げ規模と比較して、現況は当時の約30%減という厳しい状況が続いています。
東日本大震災直後は、宿泊客が激減し売り上げもほんのわずかとなりました。そのとき従業員の方々には、雇用を守るために減給をお願いしました。一方、被災者の仮設住宅が足りないことを聞き約850 名様に本館客室を中心に約8 カ月間提供させていただき、あの状況下でも企業を存続することができたのです。皆さまには心より感謝しております。
一方、カナダでの事業に関しては堅調に推移しています。特にウィスラーとバンクーバーは冬季オリンピックが開催されたこともあり、資産価値が向上しています。