マリオットインターナショナルをはじめ国内外のホテル企業でキャリアを積んできた飯島幸親氏。現在は米国・サンディエゴと東京を拠点に後人たちの育成にあたっている。グローバルな経験から、日本のホテルはマネジメント手法とオペレーション内容に大きな転換期にさしかかっているという。日本のホテル業界に必要なこととは。これからのホテリエたちへの提言とともに熱いエールをいただいた。
聞き手・本誌 岩本大輝 文 アクセント
プロシェフ・ユニバーサル 代表 飯島幸親氏
リーダーシップとグローバリゼーション
❏現在の日本のホテル業界をご覧になってお感じになっていることはどのようなことでしょうか。
長年米国と日本で働いてきて、見えてきたことがいくつかあります。双方を加味して私なりの考えを持っています。特に企業の経営者や指導層、そして次世代を担う若い人たちにお伝えしていきたいと考えています。
日本企業がグローバリゼーションの中で成長していくには、国際感覚を持った多くの人材を育てていくことが必須条件だということです。それにはグローバリゼーションに対応できるリーダーシップの育成が先決です。時代の主流であるグローバリゼーションの波にいち早く乗って、これからの世界戦略としての日本丸を推進させてほしいと思っています。
❏「リーダーシップ」と「グローバリゼーション」というキーワードを以前から使われていますが、そのお気持ちは変わっていませんか。
従来から進言してきておりますが、ますますその意義を強調したいと考えています。一般的には分かっているかと思いますが、一歩先に踏み出す行動が見えないと感じています。今やIT をはじめとする技術革新が急速に進み、それに伴って日本のホテル経営を取り巻く環境も変わって従来とは違って“真の国際化”の波が押し寄せていますが、その変化にトップ経営者たちの理解が追いついていないというのが感想です。
なすべきことは日本の官民問わない真の先進国としての自覚と振る舞いです。グローバルスタンダード(世界とのお付き合い基本ルール)の順守が大切で、また、それを確実に履行するためのチェックシステムもインストールが必要です。そこが欧米の先進国と日本との違いです。今までの日本はグローバル化しなくてもホテル経営することができていましたが、これからはそうはいきません。例えば今までは表面化しなかった有名企業ぐるみの“ごまかし”や“不正”が次々と発覚して世界の信頼を失っています。個々の抑止力や内部統制(ガバナンス)、外部からのチェックは全く機能していないからです。発覚のきっかけが内部告発という事実も全く残念です。日本の慣習で間違った事実を会社のトップや上司に単刀直入に物事が言えない仕事環境は会社をダメにするだけです。