まずは、「態度」についてある程度正確に整理しておきましょう。社会心理学における「態度構成理論」を見てみます。「態度」がどのような構造で形成されているかについては諸説が見られます。一つは、「3 要素モデル(あるいはABC モデル)」と言われるもので、「態度」とは、「認知」、「感情」、「行動」から構成されると考えるもの、もう一つは、「単一次元モデル」と言われるもので、「態度」は感情のみによって構成されると考える、大きく二つの考え方が見られます。ここで注目したいのは、いずれの理論を前提としようと、「感情」が重要な役割を担っている点は変わらないこということです。そこで、今回は特に顧客のホテルに対する「態度」を形成する際の「感情」に焦点を当てた調査を行ないました(全国男女200 名に対するインターネットアンケート調査、2020 年弊社実施)。
今回は、これまでの弊社調査の結果、顧客が事前に期待値が高いシーンでありかつ記憶にも強く残る傾向が見られた「客室」、「バスルーム」、「レストラン」の三つのシーンを想定し、ポジティブな良い感情がどれほどあれば、顧客側のホテルに対する望ましい「態度」につなげることができるのかを調査してみました。「態度」については、体験した顧客が、さらに他者に推薦したいと考えるか否かとして調べてみたものです。
アンケートでは、最初の設問を、?「客室」、「バスルーム」、「レストラン」のそれぞれ(すべてに)に良い感情(快適等)を感じるような場合に当該ホテルを他者に推奨したいと思うか、またその他の設問では、?三つのうち二つにポジティブ感情が見込まれる場合はどうか、最後に?一つだけポジティブ感情が見込まれる場合はどうかの3 設問を設定しました。
調査の結果、「客室」、「バスルーム」、「レストラン」すべてに良い感情を抱くような場合であれば、回答者のうち33.5%が他者に推薦したいと思うと回答しており、また37.5%がややそのように思うと回答していました。つまり3 回良い感情を体験した場合、合計回答者割合で約71%の回答者が「望ましい態度」を形成したことになります。また、「客室」、「バスルーム」、「レストラン」のうち二つに良い感情を抱くような場合であれば、回答者のうち26%が他者に推薦したいと思うと回答しており、41.5%がややそのように思うと回答していました。つまり合計回答者割合で約67.5%の回答者が「望ましい態度」を形成するという結果でした。さらに、「客室」、「バスルーム」、「レストラン」のうち一つに良い感情を抱くような場合であれば、回答者のうち17%が他者に推薦したいと思うと回答しており、29.5%がややそのように思うと回答していました。つまり合計回答者割合で約46.5%の回答者が「望ましい態度」を形成するという結果でした。
ここで「望ましい態度」を形成するにあたって重要となる良い感情体験の回数を見てみます。
「推薦したいと思う」と回答した人の割合だけでその比率変化を見てみますと、1 回から2 回で+9%、2 回から3 回で+7.5%、「推薦したいと思う+やや思う」との合計回答者割合の変化を見てみますと、1 回から2 回で+21%、2 回から3 回で+ 3.5%という結果でした。1 回でも良い感情を体験することが重要であるものの、特にそれが2 回となると大きく望ましい顧客の態度形成に与える影響が大きくなることが窺えます。例えば、レストランがないような宿泊特化型ホテルであっても、2 回以上別シーンで良い感情を体験する機会を用意することが非常に重要と考えられ、またそのシーンとは、例えば上記設問で設定した通り、記憶に残りやすいシーンであると効果が長い可能性があります。その他以前の調査で記憶に残りやすいシーンでは、顧客にとって「エピソード」と言えるような体験につながるようなものであり、スタッフが介在するフロントシーン、ロビーシーン、チェックアウトシーン等も挙げられます。このように、どのシーンで、2 回以上顧客に良い感情を体験していただけるか、またその感情はどのような感情であるのか、逆にネガティブな感情を抱かすようなことがないかを再確認することもCS 上欠かせない品質管理と考えることができます。