「都市計画法」では、国土は都市計画区域と都市計画区域外、非線引き都市家計画区域、準都市計画区域に色分けされている。
農業は主に、都市計画区域外の無指定地域か、都市計画区域内の市街化調整区域で営まれている。
特に、都市や市街地に近い、市街化調整区域内の農業経営に問題が発生しやすい。農地の「違法転用」が行なわれることが多いのだ。
それを予防するのが「農地法」である。農地法の運用者は「農業員会」。この農民組織が、農地の違法転用を厳しく監視している。
農地を、農業以外の目的に利用しようとすれば、農業員会に許可をもらわねばならない。だが、現実にはなかなか許可されない。許可されても、かなり厳しい条件がつく。
ところが調べてみると、大きな抜け道が存在する。市街化地域では、農地の転用は農業員会への「届け出」だけで良いのである。つまり、厳しく土地利用が制限された市街化調整区域から、何らかの政治的動きによって、市街化地域となれば(線引きの見直し)、ほとんど金を生まない農地が「黄金」に変わるのだ。
地価は、調整区域、農業振興地域では二束三文だ。しかし、坪5万円の農地が、当地が市街化となれば坪50万円に跳ね上がる。
わが家の近くで、第二東名工事に伴い大規模な区画整理が始まっている。区画整理というのは、市や農業員会、区画整理組合などが行なう土地の区画改良である。
対象は農地の場合が多い。山間部であれば、農地に機械が入りやすいように、土地を四角や長方形に区画して、大規模農業を実施しやすくするために行なうものなのだ。
しかし、我が家の近くで行われている区画整理は、農地を郊外大型店や大規模な工業団地、そして住宅街へと変えるための大規模な地ならし工事である。
上の写真は、工事現場の立て看板と、伊勢原市の広報である。農地を耕し作物を作っても、金にならないのが今の農業。
だったら、農地転用して売り払ったら、アパートを建てて「不動産賃貸業」に転身したら、今よりもっと良い生活が待っている。
大東建託、東進コーポレーション、レオパレスの営業マンが、こうした農村を我が物顔で闊歩し、“アパートを建てませんか?”と訪問を繰り返している。大手デベロッパー、大和ハウスなどの百戦錬磨の営業が、甘い夢を振りまきながら農業員に接近してくる。それがすべて悪いわけではないが、陰で札束が舞飛んでいる話は枚挙に暇がない。
「農地転用」による錬金術……、その甘い誘いが、農業経営の裏の現実でもある。
それもこれも、生活ができないほど農業収入が低いからである。
しかし志のある農業者は、明日の成功を夢にみて、本当に頑張っている。また、意識の高い農業員は未来の街づくりに一生懸命だ。
次回は、そういう明るい話題をお届けしたい。
フードビジネスカウンセラー
高桑 隆
㈲日本フードサービスブレイン 代表取締役
Takashi Takakuwa
1950年北海道生まれ。神奈川大学経済学部経済学科卒業。74年、公開経営指導協会小売業通信教育「売場管理実務講座」文部大臣賞受賞。75年、㈱デニーズジャパン創業期入社。99年、㈲日本フードサービスブレイン設立。2000年居酒屋トレーニングセンター「長鳴鶏」を開店、脱サラ・独立開業支援。01年サッポロビール21世紀会(帝国ホテル)他、年間30回以上講演実施。02年法政大学にて「店舗独立開業講座」を開設、06年度第6期まで開講。04年服部栄養学園調理師専門学校で、フードマネジメント科目担当。05年産業能率大学非常勤講師に就任、ショップビジネス科目担当。06年桜美林大学非常勤講師に就任、フードサービス産業論担当。08年コンサルタント会館レストランマネジメントコンサルタント講座開設。