日本の農業は、まったくと言っていいほど大規模化に向いていない。
それは、国土面積の狭さによる。「地政学」と言う学問では、社会や暮らしは国土のあり方や面積・位置などで規定されると説く。「地勢」は、国運を左右するような重要なファクターである。
わが国の国土面積に占める、山地と平地の割合を比較してみよう。日本の国土面積は約38万km2、山地は28万km2である。つまり、国土の75%が人の住めない山地なのである。日本人のなかで、この事実を認識している人がどれくらいいるだろうか…。
アメリカ合衆国の1/24、中国の1/25しかない国土面積でありながら、人口は1億2700万人。狭あいな面積の、その25%しか平地が無い。そこに人口が密集して住んでいるのである。
よって農業は、河川、道路、鉄道、学校、市街地、公園、住宅地、工業団地とも隣接し、農作業もそういう市街地に近いところで行なわざるを得ない。
台地・段丘(台地からの傾斜地)は、国土面積の12%。海岸沿い、河川の流砂によって形成された洪積地は、わずかに13%である。
わが国の農業は、極端に言えば、町と山の隙間、人が住んでいるすぐそばの、そんな狭い場所に農地が点在しているような状態なのだ。
だから、大規模化などまったく無理な話で、山間部では急斜面も農地として利用しなければならない。それが日本の農業の本当の姿である。
人々は肩寄せ合うように暮らす(長野県松本市郊外)
数年前、我家(伊勢原市)の周辺の野原
その狭い国土に多くの人々が暮らし、そこで起こる様々な問題を解決する手段として、法体系が整備されている。
今回は土地利用、都市開発、そして農地法に関して、その実態と農業が「錬金術」に利用されやすい、危うい構造となっているのを述べてみたい。