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第1回 高桑 隆の「良くも、悪くも、大変化。いま日本の農業と『食』を考える」

第1回  TPPが合意成立、日本農業へは大打撃! 日本野菜、本当に輸入品と比べ、世界一高いのか?

2015年10月20日(火)
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㈲日本フードサービスブレイン 代表取締役
フードビジネスカウンセラー
高桑 隆 プロフィール

環太平洋自由貿易協定、いわゆるTPPがこの10月、大筋で合意した。海外の安い農産物が、無関税で輸入促進されれば、日本の農業に大打撃を与える……、と喧伝されている。報道のほとんどが、日本農業の未来をかなり悲観的に、ため息混じりに嘆いている。マスコミが騒ぐほど、日本農業はそんなに弱いのだろうか……?
 
私などは、経営コンサルタントといっても地方の仕事が多く、商工会連合会から要請された、地方の零細飲食店の立て直し、つぶれそうな温泉旅館の経営相談などの仕事にたずさわっている。“日本農業は本当に駄目なのか……”
 
全国を回っていると、実は全くそうではない事に気付く。
商店街の八百屋さんやスーパーの店頭で、野菜や果物の品質と値段を観察し、田舎の農家の皆さんに話を聞いてみれば、驚くような内容にがくぜんとする。
 
例えば、キュウリ栽培農家が出荷している値段、きれいに形が整ったキュウリ3本で4~6円なのだ。一本ではない!一本なら1~2円。
 
ところが田畑に、形の不ぞろいなキュウリが、無造作に、大量に捨てられている。曲がったり、へこんだり、傷のあるもの、不格好な物を「規格外農産物」と呼ぶ。我家の前にも大きな畑がある。朝夕、散歩のついでに見ていると「規格外農産物」は、ひいき目に見ても20%は捨てられている・・。
 
料理に使えば、漬物・ピクルスに加工すれば、全然問題無い食材なのだが……、なんともったいないことか……。

 収穫期が終わり、畑に無造作に捨てられているミニトマト
打ち棄てられたキュウリ

「規格外農産物」の廃棄は、JAの共販システムが、見た目のよい生産物を厳しく選別するために、農家の人々に“形の悪い物は、ダメな物”と戦後50年かけて繰り返し教え込んできた結果でもある。
 
農家の人に聞いてみると、“形の悪い物は駄目だ。味も悪い……”と言う人が多い。しかし同じ畑、同じ環境で生まれた自然の恵み、味に違いは無い。
その中から選別され、綺麗に形の整ったキュウリだけが、農協の共販センターでさらに選別され、出荷される。
 
その結果が、農家の手取りは3本4~6円なのだ。ところが、スーパーや八百屋の店頭では、なんと3本100円以上で売れられているではないか!95円の中間マージンは、一体どこにいったのか?廃棄された農産物の分を入れたら、140円にもなる。利益は全て、JA共販、卸売市場、ベンダー(1次・2次卸)、小売店やスーパーに掠め取られているのである。
 
丹精込めて作った野菜や米を、原価が割れるような値段で出荷し、形のいびつな物は廃棄させられ、そして原価ぎりぎりのお金がしか残らない・・。
 
しかしこの農業地獄は、20年前から突然変わった。
 
全国各地に続々とオープンした農産物直売所、それを併設した道の駅。これら総体で、年12億人が来場し、8000億円を売り上げている。これらの施設が、農産物流通に大変化をもたらした。意識の高い農家は、農産物直売所を積極的に活用し、3本4~6円で出荷していたキュウリを、直接消費者に3本50~70円で販売することが可能となった。現金収入の増大で、農家は大喜び。

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