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2020年5月22日号 トップインタビュー 星野リゾート 代表 星野 佳路 氏

世界で通用するホテル運営会社を目指す。 星野リゾートの戦略と足下の取り組み(第二回)

【月刊HOTERES 2020年05月号】
2020年05月20日(水)
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世界で通用するホテル運営会社へ。“所有”をしてでも北米での展開は進める

---先週は最近立ち上げられた新しいブランドとその現状についてお聞きしました。今週は運営会社としての星野リゾートという点にフォーカスをしたいと思います。星野さんには本誌 2020年新年号(2020年 1月10・17日合併号)にもご登場いただき、その際は少し無理をしてでも世界に出ていくべき時だ、というようなことをおっしゃっていました。現在(インタビューは 2020年 3月 3日)もそのお考えはお変わりないでしょうか?

 その考えは変わっていないですね。旅行市場において日本の人口減少は以前予想していた以上にマイナス効果が大きいと考えています。2025年に団塊の世代が後期高齢者に入り、それに伴い旅行参加率も下がるでしょう。その結果、国内の旅行市場は縮小していくこととなります。
 
 星野リゾートとしてその対策の一つが、先週申し上げた若者の旅行参加率を上げ、若いうちから星野リゾートのファンになっていただくという取り組みでしたが、同時に星野リゾートとしてはグローバル化も進めています。日本円だけでなくドルやユーロなど外貨で収益を上げないといけない、と考えています。それを国内市場の落ち込みが目立ち始めてから取り組んだのでは遅い。国内市場が落ち込んできてからでは積極的な投資もできないからです。まだ国内市場が強く、余裕のある時期に、多少無理をしてでもチャレンジしていく、それが重要だと考えています。
 
  また、星野リゾートは運営会社なので、原則施設を資産として所有してはいません。ただし、海外展開、中でも特に北米においては、一軒目となる施設はフラッグシップとして重要なため、しっかりとしたものを作らないといけないと考えています。そのため北米においてはリスクをとって所有するというモデルでも検討をしています。

ホテル運営会社の要件「チェーン・オブ・コマンド」

---国内だけでなく世界で通用するホテル運営会社を目指されている星野リゾートですが、星野代表の考える「ホテル運営会社の要件」とは何であるとお考えでしょうか?

 スタッフに対する「チェーン・オブ・コマンド」を握っているか、ということだと思います。星野リゾートのブランドのホテルに、星野リゾートの総支配人が行き、星野リゾー
トのスタッフがサービスを考え発想し、お客さまに直接サービスをしている。その点では、フランチャイズのような名前貸しのスタイルは運営だとは考えていません。 

---絶対服従の上意下達ではなく、信頼と権限移譲にもとづく「チェーン・オブ・コマンド」という言葉、非常に印象的です。それでは、それも含めて、星野リゾートのホテル運営会社としての強みというのはどこにあるとお考えでしょうか?

 私たちの強みは「フラットな組織文化」です。グループ系ユニット(チェーンの本社的な機能を担う)と各施設が、役割分担をし、フラットな関係を築く。ホテルの現場では実際にお客さまを直に見て、さまざまなヒントを得ています。それを接客するスタッフ一人ひとりが気付き、そこから新しいサービスの発想が生まれ、それを素早く現場で実行できる体制があります。そして、それをグループ系ユニットは顧客がどう反応したか、収益がどう変化したかを数値化して見ており、それを経営判断の材料としてフィードバックする。それを、それぞれの立場の両スタッフが同じ情報を見て評価をし、次のアクションにつなげていくというフラットな関係こそが私たちの強みです。 

---徹底した数値化は御社の特徴であり、強みを支えていると思います。

最近で言えば SNSの広告効果も金額換算できるようになりました。もともと星野リゾートではテレビや雑誌などメディア露出の効果を金額換算していましたが、SNSの効果を金額換算するのは簡単ではありませんでした。二年ほど取り組み、ようやく形になってきました。 一般論で、今、テレビや雑誌の影響が弱くなっており、逆に、WEBや SNSは強くなっていると言われています。ただ、数値化していないものを信用していいのかは分からないと考えています。「最近雑誌が弱くなっているから、露出も減るのはしょうがない」という話があっても、数値化しなければ本当に許容していいのか分かりません。星野リゾートではそうしたメディアの広告効果を金額換算し、同じ露出でも前年同月比で下がった、変わっていない、上がった、と分かるので議論に信憑性があります。

過去にデジタルマーケティングを担当しているスタッフから、「Twitterをやるべきだ」と提案がありました。その後、「Facebookもやるべきだ」とさらなる提案があり、議論になりました。私は「“いいね!”を集めて何の価値になるのか?」と言っていましたが、数値化してみると、やはり効果が出ている。そうすると、私はもっとやりたくなってしまっているわけです(笑)。

実際、先週もお話に出た「BEB5軽井沢」は20代を中心にした若者をターゲットにしていますが、SNSだけで告知ができています。ほかをほとんどやる必要がありません。やってくるお客さまもSNSでかなり露出をしてくださいますし、施設のスタッフも自分たちは SNSが重要だと確信しているので、情報発信をしてもらう工夫ができています。

 数値化もそうですが、先週お話をしたようにターゲットを絞り込み、現地のスタッフが自分は何を考えるべきかに集中できること、そしてそれをスピーディーにオペレーションとして形にできるフラットな組織文化、それらが星野リゾートの強みです。 

 

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