■ 今日のポイント 「自ら課題を見つけ、自ら考え、それを人に伝えられ、行動できる人材育成にはワーク ショップなどさまざまな研修プログラムにより、まずは人を育てる環境づくりが必要」
公共財団法人日本生産本部が発表している2015 年度の新入社員タイプは「消せるボールペン」でした。見かけはこれまでの新人と変わらないが、活用次第では大きく開花させることもできる。ただ、使い方を誤るとすぐにインク切れ(離職)する危険性もはらむため、のびのび育てるのがベターとのこと。
私も本年度の新入社員含む研修を担当させていただきました。印象としては、純真で素直、大人しく落ち着いている印象でした。ホテル・レストラン業界では同じ新入社員と言っても大卒者だけでなく、専門学校や高校を卒業されて入社される18 〜22 歳のさまざまな年代の方々が新卒者として入社されます。特に地方のホテル・旅館では高校を卒業された18 歳の若者が入社されるケースも多いようです。ですから、一般企業に比べて新入社員研修の内容はもちろん、その後のフォローアップ研修では、特にそれぞれのメンタルまで含めたフォローが重要になります。
この度、初の中学・高校生を対象にした講演依頼を頂戴しました。そこで、今の学校教育について校長先生からお話を伺いました。これまでの「ゆとり教育」とは随分印象が異なり、時代と共に日本の学校教育も大きく変化しているようです。
急速にグローバル化が加速する現状を踏まえた「21 世紀型 グローバル教育」を掲げ、単純に英語力を深めるだけでなく、将来的に政治、経済、法律、学術などの幅広い分野において国際的に活躍できる人材育成を目指されているそうです。与えられた課題を真面目に取り組むだけでなく、自ら課題を発見し、自ら考え、それを人に伝え、行動できる人材育成が急務だとお話ししてくださいました。
具体的に「21 世紀型スキル」として四つの能力を規定されています。①問題発見力(自ら課題を発見し、解決しようとする自発性)、②論理的思考(筋道を立てて考え「なぜそうなるのか?」と自問し正しく判断する力)、③協同解決力(仲間を尊重し、自らの役割と個性を自覚することで互いを生かしてよりよい解決法を導く)④情報発信力(自らの考えを論理的に、説得力を持って分かりやすく発信する力)の四つです。
実際に国語の授業では「論理エンジン」を教材に加えられているそうです。これら四つの能力は社会人としても不可欠な能力です。今後、われわれはそのようなスキルを中学・高校で学んだ人材を受け入れるのです。
その際、指導する立場となる先輩社員や管理職が「自ら考え、それを人に伝え、行動できる」人材でなければ、そのような人材を活用することはできないでしょう。私自身、これまでの研修内容を見直す良い機会となりました。
特にお客さま一人一人に合わせパーソナライズするホテリエの仕事では「答えのない課題に対して自ら取り組み、プレゼンテーション能力を高める」ことは不可欠です。現場で様々な経験を重ね学ぶことはもちろん、計画的な教育制度と共に時代に即した研修プログラム(トレーニング)も必要です。「専門能力を向上させるOJTだけではなく、定期的にグループワークなどを用いたワークショップ等の場を持つことで、コミュニケーションやプレゼン能力も高まり、メンタルヘルス面でも効果的な結果が出ています。次は「教育制度、および教育プログラム」についてお話しします。
㈱オータパブリケイションズ
Exective Officer 永末 春美
プロフィール
永末 春美
㈱オータパブリケイションズ Exective Officer
1998 年神戸市内のホテル支配人就任。2005 年1 冊目の著書「小さなホテルの支配人が書いた 情熱と感動の仕事術」が出版され、講演活動も展開。2007 年神戸北野ホテル支配人に就任。ホテル支配人業務に加え、ホテルコンサルティング業務も兼務。2010 年神鋼環境ソリューション社外取締役就任。2014 年10 月より株式会社オータパブリケイションズ 経営企画室兼人材事業部にてホスピタリティ業界の人材育成コンサルティング及び社員研修を担当。