立地する地域との “ご縁 ”を起点として「お宿Onn」のプロジェクトがスタートした
----女将塾が2022年 8月から展開を始めた、「お宿 Onn」ブランドのプロジェクトを立ち上げた経緯を教えてください。
女将塾は基本的に小規模な温泉旅館の運営に関する専門家ですが、その中で宿泊特化型の「お宿 Onn」を立ち上げることになった背景には、これまで旅館を運営してきた地域とのご縁がありました。
岐阜・中津川市の「お宿 Onn中津川」の場合は、もともと私たちが中津川温泉「ホテル花更紗」の運営をしていたことからご縁がつながりました。「花更紗」の運営については 2021年 10月に契約満了を迎えましたが、その少し前に地元の木材会社である丸山木材ホールディングス(株)の丸山社長から「ホテルを経営したい」というご相談を受けたのです。丸山社長は「花更紗」で培ってきた私たちの実績をご存知だったことから、最終的に「お宿 Onn中津川」の運営を女将塾に任せていただくことになりました。
山口・湯田温泉の「お宿 Onn 湯田温泉」は、女将塾が最初に手掛けた旅館再生プロジェクトが湯田温泉の案件だったというご縁から始まりました。もともと温泉旅館を経営していた(株)湯田かめ福の梅林社長から、所有している施設を解体して新しい建物で新規開業したいというご相談を受けました。(株)湯田かめ福は地元でホテルや温浴施設などを複数所有していて、ホテルはオペレーターに運営を任せているのですが、新しい施設は温泉旅館の運営のプロフェッショナルである女将塾に宿泊棟は任せ、隣接するかめ福オンプレイスと一体で運営したいという要望をお持ちでした。
これまで女将塾が運営してきた温泉旅館とはタイプが異なる 2軒の「お宿Onn」ですが、立地する地域とのご縁があったことを起点としてプロジェクトをお引き受けすることになったというのが経緯です。
宿泊特化型と言っても「お宿 Onn」はスーパービジネスホテルではなく、温泉旅館とライフスタイルホテルの中間あたりのイメージで創り上げたブランドになります。中津川では朝食はレストランで食べていただきますし、夕食は 20組から 30組に提供するスタイルで展開します。湯田温泉では(株)湯田かめ福が経営するコンベンション施設、「かめ福オンプレイス」が隣にあるので、そちらでブッフェの食事や大浴場を提供していきます。
---- 2軒の「お宿 Onn」の建築デザインのコンセプトは、どのようなものでしょうか。
中津川は地元である岐阜の木材を使いながら、木の温もりが感じられる温泉旅館を意識した建築デザインとなっています(詳細は HOTERES・2022年 4月 1日号を参照)。
湯田温泉に関しては併設されている「かめ福オンプレイス」の空間に合わせるというよりも、滞在の空間としてしっとりと落ち着いた空間づくりを目指しました。和の要素を取り入れながら、モノトーンの素材をベースにした色味になっています。その上で和風の数寄屋づくりの先進性も入れながら、本来は仕上げ材ではないものを仕上げに使い、ラフでざらざらとした質感をあえて打ち出していくなど意匠的なこだわりを表現しています。
湯田温泉は車の往来も多い都市の喧騒が感じられるエリアなので、その喧騒から距離を置くために旅館の前面に苔や石積みのある和風の庭を配置することで、滞在の質を高める工夫を施しています。