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2020年2月28日号 新しい視点「ホテルの価値」向上理論 ホテルのシステム思考

第388回 環境を考えるホテル(4)

【月刊HOTERES 2020年02月号】
2020年02月27日(木)
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 ここでは、環境配慮型運営に対する肯定的意見について、その取り組みを「大変重視する」から「やや重視する」と答えた人の全体回答者に対する割合としてみています。それぞれの肯定的意見を比較しますと、温室効果ガスの抑制(直接的取り組み)は、環境保全基金への寄付(間接的取り組み)と比べて、より高く評価されているようでした。また、この肯定的意見については、ビジネスホテルでは20 ~ 30%、シティホテルと旅館では30 ~ 40%、リゾートホテルでは40 ~ 50%が肯定的という結果でした。ビジネスホテルでは、ほかと比べ重視する人の割合が低いものの(それでも20%以上あります)、リゾートホテルではなんと半数近くが重視するという結果でした。一方で、環境配慮に対する経済的対価という意味では対照的でした。それら取り組みに対して仮に追加で料金を支払うとすればいくら支払ってもよいか(金銭的支払受容額)については、大半の利用者(60 ~ 70%)が「支払いたくない」、または支払っても100 ~ 500 円程度という回答でした。

このように、多くの利用者は、環境配慮に対する取り組みを重視してはいるものの、あくまでホテル側が自主的に行なうべき取り組みと考えているようでした。直接的効果の測定以外に、「環境配慮型運営」から連想されるホテル旅館のイメージ、つまり間接的効果を調べてみますと、徹底した環境配慮の実践ができている場合、ホテル旅館のハードウエア、ソフトウエア、ヒューマンウエアそれぞれの事前期待に影響を与える様子がうかがえます。

先ほどご紹介した通り、経済的対価には結びつけにくく、ADR への転嫁等直接的な経済的効果はそれほど見込めないものの、「環境配慮」というキーワードが引き起こす連想という意味では非常に大きな効果が期待できるのです。環境配慮型運営を実践できていること自体が、そのホテルのハードウエア、ソフトウエア、ヒューマンウエアの3 要素それぞれすべてに対して、「レベルが高いはず」と感じているようです。この効果は絶大で、なんと10 人中7 人がそのように感じると回答していました。そのほか代表的な環境配慮の取り組みとして、「CO2 排出を考慮したホテル」、「省エネ徹底設備を有するホテル」、「まちなみ景観を配慮したホテル」、「屋上に緑や庭にできるだけ地域に根差した緑化に取り組んでいるホテル」、「ゴミ減量化をしているホテル」、「生物多様性(あらゆる生物に直接影響を及ぼす要因)に配慮しているホテル」、「再生エネルギーを活用したホテル(太陽光発電等)」、「建築・設備に関する有害物質回避を徹底したホテル」を取り上げ、それらに対する顧客側の「印象の良さ」を調べてみますと、すべての取り組みについて、総じて過半数の人が、印象が良いと感じるようです(「大変印象が良い」+「印象が良い」と答えた人の平均値65.3%)。

特に良い印象なのが、「まちなみ景観を配慮したホテル」で全体の77.5%の人が良い印象を抱きます。次いで「屋上に緑や庭にできるだけ地域に根差した緑化に取り組んでいるホテル」が75%、「建築・設備に関する有害物質回避を徹底したホテル」では70%という結果でした。そのほかでは「ゴミ減量化をしているホテル」が64%、「省エネ徹底設備を有するホテル」58.5%、「CO2 排出を考慮したホテル」57.5%、「生物多様性(あらゆる生物に直接影響を及ぼす要因)に配慮しているホテル」55.5%と続きます。

「環境配慮」は、サービス面だけではなく、ハードウエアやヒューマンウエアに対してもポジティブな連想につながっており、ハードウエアに対しては、自然配慮というクリーンなイメージが施設全体の清潔感等のポジティブ連想につながっている可能性があること、また、ソフトウエアやヒューマンウエアに対しては、それら環境配慮の取り組みができているということ自体が、高いレベルで利他的配慮ができているという「証し」でもあり、顧客に対する高いレベルのサービスも同じく期待できるはずと感じさせている結果ではと考えられます。このようにキャピタルマーケットで重視されていること以上に、すでに顧客側でもそれらの取り組みが宿泊施設の印象形成に大きく影響を与えているのです。

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