人づくり・組織づくり
良い店、良いホテルの共通点の一つに、安定した運営が挙げられます。運営が安定することは、店やホテルが強くなることを意味しており、その結果としてお客さまの満足と感動につながり、そして繁盛するのです。しかし、働く人が入っても、なかなか定着しない店やホテルでは、決して繁盛することはありません。人が定着し、そして、その人が戦力になってはじめて店やホテルが強くなってゆくのです。そのための一番大切な機能は、何と言っても、人の採用と教育、それに人の定着と戦力化が図られていることです。この人の採用から戦力化の流れを強くすることが店やホテルの運営では重要になってきます。店やホテルの組織づくりとは、そんな人づくりに始まり、人づくりに終わる仕事です。そして、働くみんなの力を結集して、すべてのお客さまの満足と感動を得ることができれば、店やホテルは必ず繁盛店へと歩むことができます。最終的に、あなたの店やホテルを際立たせるのは、あなたの店で働いている一人一人の仕事振りであるということを決して忘れてはなりません。繁盛店は、一人でできるものではないし、一人で作るものでもありません。もちろん、一日でできるわけでもありません。そこには、店長や支配人の人たちが中心となった、お客さまの満足と感動を得るための、良い組織づくりがあります。そして、そのベースは人に関するマネジメントにあります。
ピープルプラクティス
店長や支配人として良い成果を生むためには、あなたを支えてくれる多くのスタッフとの良い人間関係が基本となります。われわれの仕事はピープルビジネスであり、お店の人たちの笑顔は、われわれのイメージの重要な部分です。人を管理する者としては、店やホテルで働く人たちが笑顔を絶やさないようにする責任があります。そのためには人の接し方に対する知識を身に付けなくてはなりません。このことをピープルプラクティスと言います。そこで今回からは、ピープルビジネスの基本となるマネジメントについて説明してゆきます。
良い人間関係とは
良い人間関係とは、良いトレーニング、良いコミュニケーション、そして、良いモチベーションの知識と技術を身に付けることによって生まれます。そして、その実践によって良い人間関係が構築されるのです。そんな良い人間関係の構築によって得られることには次のようなものがあります。
⑴ スタッフの仕事に対する姿勢とやる気が高まります。
⑵ やる気が高まることで退職が少なくなり戦力がアップします。
⑶ 戦力がアップすることでQ・S・C の向上が図れます。
⑷ Q・S・C が高まることでお客さまが増え売り上げが伸びます。
良い人間関係とは、そんなスタッフ、そして、お客さまにとってもよい環境が生まれることで、働くみんなの仕事振りが高まり、Q・S・C が向上し、その結果、人気の蓄積が図られることで客数と売上高が伸びます。そして、結果として利益が出るもうかる店になることでもあります。
よい人の接し方に関する六つのコツ
われわれの仕事はピープルビジネスです。このピープルビジネスで成功するためには、店長や支配人の人たちは人の接し方に対する知識を身に付けなくてはなりません。それでは、まず人の接し方に関する六つのコツについて説明します。
⑴大原則に従う
自分だったらこうしてもらいたいと思うやり方で店の人たちと接してください。敬意をこめて接すれば店の人たちもあなたに良いように接してくれるはずです。間違っても、過去自分が受けた理不尽なことは絶対にしてはなりません。
⑵スタッフを知る
各スタッフが今取り組んでいる課題や将来目標については必ず把握しておいてください。人によっては、家庭環境などについても把握する必要があります。
当たり前ですが、あなたの下で働いているスタッフは機械ではなく、あなたと同じ人間です。共に何かをするためには、まずスタッフのことをよく知ることから始めなくてはなりません。
⑶コミュニケーションを持つ
具体的に何をしてほしいのかを伝えなければ、スタッフは行動を起こせません。具体的な行動に即した言葉で、やってほしいこと、やってほしくないことを行動が変わるまで伝えつづけることです。これは、良い人の接し方に関する基本中の基本です。
⑷望む行動を積極的にアピールする
正しいやり方を強調してください。スタッフが正しくやっていないことを苦にしてはいけません。スタッフが間違ったことをやったら、間違っていることを伝えてください。そして、望む行動を積極的にアピールしてください。それも、繰り返しアピールしてください。もう知っているだろうという、そんな考えが人をダメにします。
⑸明るい姿勢を見せる
自らスマイル&ハッスルで手本を示してください。あなたが暗く、つまらなそうに仕事をしていると、スタッフも同じようになってしまいます。店長や支配人は、どのような状況においても、いつも明るく、そして生き生き仕事をやっていなければいけません。
⑹学んだ原則を実践する
知識を得ただけでは、良い人との接し方は身に付きません。どんどん実践して経験を重ねてください。最初はなかなかうまくいきませんが、実践を重ねるにしたがって、良い人間関係が生まれます。そんな人間関係とは、親しみやすく、積極的なスタッフにお客さまの対応をさせることができると同時に、より高いレベルのQ・S・Cを提供することになります。さらに、スタッフのやる気が高まり、生産性が向上します。良い人との接し方とは、この仕事のスタートでもあります。
『飲食店で働く人たちへ1 分間メッセージ
――店を伸ばす自分を磨く仕事のやり方』
著者:五十嵐 茂樹