パネルディスカッションの模様。写真左からJTB コーポレートセールスの中村弘子氏、ホテルニューオータニの杉井志帆氏、全日本空輸の佐々木一彰氏
TOEICⓇ Tests 受験は
仕事の段取り力向上につながる
“ おもてなし力向上” を課題の一つとして掲げているホテルニューオータニの杉井氏は、「時間の余裕があれば気持ちにも余裕が生まれ、お客様に丁寧なサービスを提供することができます。つまり時間の余裕がなければ、おもてなし力の向上はおぼつかないわけです」と指摘する。
では、時間の余裕を生み出すにはどうしたらよいのか。杉井氏はずばり、「段取り力の強化」だと言う。「そもそもビジネススキルの高い人は、仕事の段取りがいいのだと思います。そして、段取り力をアップさせるには“ 日々の訓練” が大きなポイントとなります」
そこでホテルニューオータニでは、独自の社内英語検定試験をはじめ、TOEICTests、日本語文章能力検定、マナー・プロトコール検定などのツールを活用して社員の“ 日々の訓練” をサポートし、段取り力の強化を図っている。これらのツールのうち、例えばTOEIC L&R のスコア350点の人が700 点の壁を超えるための戦略について、杉井氏は次のように説明する。
「戦略としては、“ 解き切る”“ 士気維持”“ 天敵対策” の3 つがあげられます。まず、時間配分を工夫し、問題の傾向を研究して“ 解き切る” こと。次に、700点を取得したときの喜びをイメージし、それに向けてモチベーションを保つための自己分析をしながら“ 士気維持” を図ること。そして、ベストなコンディションで受験できるよう体調を管理し、環境を整備するなど“ 天敵対策” を講じること。これらを実践することが、700 点突破の近道となります」
そして、「こうしたテストへの準備や受験が、段取り力の強化につながっていくことになるのです」と、TOEIC Testsと仕事の段取り力の意外な関係性について語った。
おもてなしの心があれば
語学力は必ず上達する
社員の英語力について、ANA では「英語でコミュニケーションを図るために、TOEIC L&R のスコアが600 点以上あることを求めている」(佐々木氏)とし、新入社員も必須要件ではないが600 点を目安に採用しているという。ホテルニューオータニでは、“Excuse me” と言われたときに誰もが“May I help you ?”と即答できる英語力を求めており、「それが英語にアレルギーを感じないレベル」(杉井氏)だとしている。
JTB コーポレートセールスの中村氏は、「お客様と信頼関係を築くうえで も、先方のレベルに合わせて対応できる語学力を身につけていかなければなりません」と言う。そして、「社員はもともとホスピタリティマインドにあふれ、コミュニケーション能力にも長けていると自負しています。こうした特性は語学力上達にもプラスに働くと思っています」と希望を語る。杉井氏も、「人を喜ばせたいという“ おもてなしの心” があれば、語学力は必ず伸ばすことができます」と力強く語った。
世界のホスピタリティ業界もTOEICⓇProgram を活用
講演するETS のドマス氏
「TOEIC セミナー」では、TOEIC Pro gramを開発した米国ETS(Educational TestingService)シニアディレクターのマガリ・ドマス氏が、「観光産業は全世界のGDP の10 %以上を占める成長産業であり、グローバルなコミュニケーション手段としての英語能力はますます欠かせないものになります」と講演し、TOEIC Program が世界の観光・ホスピタリティ業界で活用されている事例を3 つ紹介した。
1つ目は、エールフランス航空(Air France)でのTOEIC L&R の活用例である。同社は社内の英語テストを用いて新人を採用していたが、より正確性・公正性を期してTOEIC L&Rを導入し、新人採用に活用した。その後、職種別に最低スコアが設定され、カスタマーサービスエージェントが680 点、メンテナンスマネジャーが800 点、そしてパイロットは850 点のスコアが必要となった。これにより、エールフランス航空では英語力の高い人財を確保できるようになったことは言うまでもない。
2 つ目は、タイにある高級リゾート・バンヤンツリー サムイ(BANYAN TREE SAMUI)での活用例である。バンヤンツリー サムイには全世界からリゾート客が訪れるため、従業員には英語でのコミュニケーション能力が不可欠である。そこでTOEIC L&R を活用して従業員の英語スキルを評価し、それをベースに効率的な研修を開発・実施。これによって従業員を適材適所に配置しているという。
3 つ目は、昨年9 月に中国で開催されたBRICS 首脳会議でのボランティアの配置にTOEIC Program が活用された事例である。BRICS 首脳会議のような国際イベントを成功させるには、ボランティアの支援が欠かせないが、誰をどこに配置するかが大きな課題となる。そこで、TOEIC L&R およびTOEICSpeaking & Writing Tests によって600 人のボランティアの英語力を評価し、レベルに応じてそれぞれを適切なポジションに配置したのである。
この事例は、2020 年の東京オリンピック・パラリンピック開催時にも大いに参考となるに違いない。