▪商品の分類
今までの考え方を踏まえて現在売られているそれぞれのメニューがどのようなポジションであるかを分類する必要があります。では二つの基準でどのように分類するかを説明していきます。
一つ目は「人気度」です。売れ筋商品かどうか? まあまあ売れているのか? それともあまり売れていない商品なのか? いわゆるABC 分析と似た考えです。もう一つの基準は「利益額・利益貢献度」です。その商品を売ることでどのくらいの利益を生み出すのかということです。ここで大切なポイントは「利益率ではない」ということです。利益率で商品を比べると販売価格の高いメニューもあれば安めに設定しているメニューもあり、その価格によって利益額は左右されるからです。原価率が低く、利益率が高くても価格が安ければ利益額はそれほど高くなりません。要は販売価格と原価率とのバランスで利益額はコントロールされるということになります。原価率をかけてお手ごろの価格設定をすると顧客はそのメニューをたくさん注文することになりますが、利益はいまいちという商品にもなるのです。
このように二つの基準で高い、低いで分類することによってそのレストランのメニューを四つに分けることが出来ます(図①参照)。【右上】人気もあって利益の貢献度も高い商品を「スター商品」と呼びます。もちろんこの商品がそのレストランにとっての稼ぎ頭になっています。【右下】人気度は高いが利益貢献度は低い商品は「芸人」です。【左上】逆に人気度は低いが売れたら利益が残る利益貢献度は高い商品は「金のなる木」といいます。【左下】そして人気もなければ、利益も残らないメニューが「負け犬」と言われています。この呼び名はほかの名前を使っているところもありますが、今回はあえてこの名前で書かせていただいています。
▪分類方法
このように四つに分類することで自分のレストランのそれぞれのメニューがどの位置にいるのかが明確になり、可視化されます。その二つの基準で評価するときに何をもって高い、低いのか? またどのくらい高いのか、低いのかを見定める基準がそれぞれに必要になってくることになります。
まずは「人気度」です。どのラインを基準に高く、低いのか? この基準は【図②】のように1 ÷総メニュー数× 0.7(70%)という数式で基準値が算出されます。この0.7 という数値はミシガン州立大学のカサバナ教授が数々のレストランの運営データから導き出した数値です。例えばそのレストランに10 のメニューがあるとすると、そのレストランの人気度基準数値は「1 ÷ 10 × 0.7」で0.07(7.0%)ということになり、商品の出数の構成比の7%以上であれば人気度は「高」ということになります。また、それ以下であれば「低」ということになります。
また、「出数の構成比」とはすべての商品の出数合計を分母としたとき、その商品の出数シェア率になります。この人気度が高ければ高いほどそのチャートの中で右に位置し、低ければ低いほど左に位置することになります。このようにすべての商品に「高」「低」をつけることになります。また、次回例を挙げながら細かく作成方法を説明します。
次に「利益貢献度」です。この利益貢献度の基準は「平均粗利益額」になります。すべての商品から一つ当たりの平均粗利益額を算出することになるので、【図②】のように「総粗利額をすべての出数で割ったもの」になります。一つ一つの原価額(率)が分からなければそれぞれの商品の粗利額は分かりません。ここで以前にも解説したレシピが役立ちます。ここでは売価からレシピ上で原価額を引いた粗利額(想定粗利額)がその粗利額になるということです。ここでレシピの大切さが分かると思います。このように粗利額平均が基準となり、それを上回るものは「高」となり、低いものが「低」ということになります。
この二つの基準を使ってすべての商品の「人気度」「利益貢献度」を査定しその「高低」の組み合わせによってその商品の分類が図②のように決まるという仕組みです。【図②】のように「人気度が高、利益貢献度が高」であればこれは「スター」であり、「人気が高、利益貢献度が低」ならこれは「芸人」、「人気度が低、利益貢献度が高」であればその商品は「金のなる木」、どちらも基準値より低ければそれは「負け犬」と四つの分類が可能になるわけです。
次回は実例で分類を行ない、そこからどのようなアクションを起こしていくべきかを解説していきます。