「彼を知り己を知れば百戦殆あやうからず」、有名な孫子の兵法の一つである。現代において経営者はコンペティターの動向を把握し、営業マンは営業先の現状把握が必須。時代は変われど、「相手を知る」という本質は変わらない。
昨年から引き続き週刊HOTERES は、人脈マッチングスペシャリスト、TOPCONNECT ㈱代表取締役 内田雅章氏をファシリテーターに、企業存続のノウハウや秘訣を探るべく、トップ企業経営者との対談を実現。第17 回は、東京マラソン2016『第10 回記念大会ランナー応援ソング』を手掛け、90 年代からアーティストとして活動を続ける森友嵐士氏に登場いただき話を伺った。
妥協からは何も生まれない
理想を描く心が結果につながる
内田 狭き門の音楽業界で、デビューからヒットに至った経緯から伺えますか。
森友 僕のデビューした90 年代はライブ活動がベースにあって、それをファンのみんなやプロダクションの方々が足を運んでくれたり、ほかにはオーデイションもいろんな可能性をくれるものの一つだったよね。音楽の世界の話なので理屈とか正解というのはないんだけど、自分たちが表現するものと相手が求めるものがまるで恋愛のように重なりあったとき、その出会いがスタートのきっかけとなって、メーカーやタイアップ、いろんな可能性へと広がっていったように感じてるよ。20 代はじめからかな、プロを意識したバンドを作って「自分の信じる価値観に一切の妥協をしない」を自分のルールとして活動を続けた。たった一人なんだ、たった一人のプロデューサーとの出会いから、そして当たり前だけど、妥協のない制作活動の結果、「ヒットした」って場所にたどり着いてたような気がするよ。
内田 「妥協をしない」、言葉でいうほど簡単ではないと思いますが。
森友 自分にとって一番大事なものだったからね。妥協しないと言うより、できなかったんだよね。理想をしっかりと思い描くこと、自分なりの理想、ビジョンだよね。具体的に何がYES で何がNO なのか。デビューがゴールじゃないからね。音楽活動を進めていくうえで表現方法は形、ジャンル、ビジュアルなどいろいろあるけどさ、そこにプロダクションやメーカーが加わってくると、周囲からのいろんな意見や条件がこれでもかってくらい飛びかってくるんだよね。その中で、自分が共感しないものには絶対に手を伸ばさないようにしてきた。カッコつけた言い方するとさ、相手の意見を聞かないってことじゃなくてさ、何か欲しいもののために、自分の中にある大切なのもを引き換えにしないってことだよね。要はさ、嫌なものを嫌と言えれば大丈夫ってことだよね(笑)。
内田 意見がぶつかりあったときや、食い違ったりしたときはどのように考え対応されてこられたんでしょうか。
森友 人が集まると、意見の対立とか不一致って必ず起こっちゃうよね。そこで当たり障りのない答えを選択したり、お互いの意見を一方的にぶつけ合うだけじゃ、当たり前だけどいいものは生まれないよね。大事なことは、きちんと向き合って分かりあうこと。多くの場合結局は同じゴール、同じ方向を目指していることが多いと思うんだよ。方法論や考え方が少し違うだけ、相手と自分が共鳴するところ、お互いを円に例えるなら、その円同士が交わったところ、そこに落とし込めれば皆がハッピーでしょ! 分かり合える理想をあきらめないってことかな。単に意見を通して強引に進めたところで、結果得られるものは多くないし分かり合えなきゃ、なにより楽しくないでしょ。