福永 モデル業に始まり、今では企業の人材育成やホテルスタイリスト、パーソナルイメージプロデュースなど行なう経営者として活躍されていらっしゃいます。初めにモデル業から転身された経緯をお聞かせください。
竹本 とにかくモデルとして一流のステージに立ちたい、納得できる仕事がしたいと、丁寧に一つ一つの仕事を続けていました。30 歳を超えてからオートクチュールという素晴らしい世界にたどり着き、いろんなショーに出ました。そのころからモデル業と並行しながら、美容業界向けのセミナーやブライダルファッションアドバイザーとして各ホテルで講演を始めるようになったのです。その後、ザ・リッツ・カールトン大阪で全国初のブライダルスタイリストを立ち上げることとなり、法人化に踏み切ったのです。
福永 モデル出身と聞くと、ウォーキングやヘアメイクなど美しい立ち居振る舞いを軸としたレッスンやセミナーが中心になるかと思われがちですが、企業の人材育成も手掛けていらっしゃいます。人材育成において何をテーマに教えていらっしゃるのですか。
竹本 集大成としては「心・技・体」でしょうか? 「心」は座学で“気”について学びます。まずは自分の“気”を正しく整えることが大切なのです。悪い“気”のスタッフがお客さまに幸せな時を提供することは難しいです。それはモデル業も同じです。モデルは素敵な夢を観客に見させることが使命です。そのためには「技」としての美しい歩き方や身のこなし、素敵な笑顔が必要です。でもそのモデルが私生活が乱れ心が荒れていたらそれは必ずくすんだ印象として表に出るのです。“気”が整っていない証拠です。ホテルのスタッフも同様なのです。ホテルという表舞台に立つ前にバックヤードの鏡の前に立ち“よしっ!”と気合を入れ、ホテリエとしてのスイッチを入れます。モデルも同様にステージに立つ前にモデルとしてのスイッチをいれます。人材育成を進めていく中で、モデルもホテリエも表舞台に立つ、人に影響を与えるという意味で同様であることに気づいたのです。単に礼儀作法やウォーキングではなく、自身の“気”を整えた上でおもてなしの“気”をつたえられる、そんな人材育成が重要だと積極的に取り組み始めたのです。
福永 確かにポジティブなマインドを持っていたり、笑顔がステキな人を見ると“私もがんばろう”という気持ちになったり、自然とこちらも笑顔になります。
ホテルにはさまざまな方がご宿泊されたり、お食事をされたりします。もしかしたら、中には落ち込んでいたり、悩みをかかえていらっしゃる方もいるかもしれません。その様なとき、満面の笑顔や優しく声をかけられたりすると、ネガティブな気持ちが払しょくされるかもしれません。
竹本 人間、本来ネガティブな動物です。ポジティブに自分の“気”を整えるためには、そのための思考の方法を学ぶのですが、手っ取り早いのはやはり笑顔を意識することです。笑顔になることで脳が影響を受けます。
ネガティブな発想や言葉や習慣は脳がそれを認識し、確実にエネルギーが低下します。まず目線を上げる、ネガティブな言葉を使わない、言わない、ポジティブな言葉を使う。他者の悪い“気”を受け取らない。
そんな小さな積み重ねが気がつくとポジティブな自分を作っていたりします。HAPPY な人生を過ごすためには自分でHAPPY を作るのです。自身の“気”が良い“気”に傾くと、お客さまの“気”もHAPPY へ変換させてしまうこともできてしまいます。
社内外の仲間の気も同様です。研修の中でもこの一番重要な笑顔ができない人もいます。私自身、人材育成をミッションとする中でトコトン真剣に取り組んでいますので、そんなときは容赦なく攻めます。必ず越えてもらいます。
“できないのであれば、もう帰っていいよ”とまでいうときもあります。もちろん、契約に際し、厳しい指導について事前に打診しています。実際、研修中に泣いてしまう人もいます。それでも何とか1 つの壁を乗り越えて一歩でも成長してほしい、誰のためでもなく、あなた自身のために、という思いで挑んでいます。すべての研修を終えた後のほんわかとした信頼関係は、とても良いものです。