毎週、お酒に関わらず飲料を様々な視点で紹介したり考えてみるコラム「Drink of the Week」。
第5回は、少し風変りなジン、草木酒フォレストジン。
草木酒フォレストジン
原材料の60%以上にスギ、ヒノキ、ナラの間伐材を使用し、そしてボタニカル原料の100%が国産野生香木という取り組みは日本初との事。
【原材料】 ヒノキ、スギ、ナラ、コウヤマキ、ネズミサシ 、ハイビャクシン、カラキ。
製造者:株式会社スティルダムサガ
販売元:日本草木研究所
スキーマ
このお酒を飲んだ時に思い出したジンが2つあります。一つは、養命酒製造株式会社が造る「香の森」、もう一つが中野BC株式会社が造る「KOZUE」。前者は、クロモジを使用している点が、後者は高野槙が使われている点がUSPです。この2つのジンの経験に加えて、木を食む経験や木酢液を使ったりしたことがあったので、独特の香りが何由来なのかを考える事ができました。
というのも、このお酒、ボタニカルの原材料は100%国産の野生香木なんです。それもあってか、柑橘やジュニパーのニュアンスがある通常のジンを飲みなれている方からは「これジンですか?」と声が上がったこともあるとの話を聞きました。よく日本産にこだわると、ゆずなどの柑橘が用いられたりしますが、木100%という姿勢がとても挑戦的で素敵だと感じます。お酒の定義(カテゴリーの定義)はさておき、どことなく柑橘というか酸味を感じる香りがあります。
少し話は変わりますが、バラの香りといわれて思い浮かべるのは、華やかでフローラルな甘い香りだと思います。しかし、実際のバラを良く嗅いでみると、意外にレモンに近いような柑橘っぽい香りがしたりします。よく言われるようなバラの香りは、ゲラニオールに代表される香りですが、実はレモン様の香りがするシトラールも含まれていたりします。しかし、世の中の製品に用いられるのは「バラの香り」としてバラっぽく感じる香りなので、バラからレモンの香りがするとはなかなか思わないものです。
認知科学の世界に「スキーマ」という概念があります。簡単に言うと、物事を考える際に、その物事と関連のある事象の結びつきの様なものです。今回の草木酒フォレストジンを例にすると、ジンには、「蒸留酒」や「ボタニカル」、「ジュニパー」といったものが結びついているという感じになります。従って、このジンを想起したときに「木」の要素がスキーマにない場合は、ジンと言われても「木」にまつわる事が思い出されることが稀であるということになります。
試飲した際に、「香の森」と「KOZUE」が思い出されたのは、私の中でジンに「木」の要素があるというスキーマが形成されていたからだと思います。来週は、FOODEXが開催され、世界中から未輸入のもの含め集まります。是非、こうした機会を活用して、Connecting the Dotsではないですが、既成概念に捕らわれない自由な発想へと繋がるような経験をしていきたいですね。
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【今週のカバー】Lyon, France
日本でもよく知られているポール・ボキューズ氏。食の都という雰囲気が様々なところに感じられます。ディジョンからリヨンにかけて、ブルゴーニュが広がっていますが、同じブルゴーニュ近くの町でも、ディジョンとリヨンでは雰囲気が異なり驚いた覚えがあります。
担当:小川