酒造創業1772年、岩手県最古の酒蔵・菊の司酒造㈱(岩手県岩手郡雫石町、代表取締役社長 山田栄作)は、M&Aにより2021年に経営を託された。同年10月22日には、「感動の瞬間(とき)」をコンセプトとした生原酒シリーズ「innocent(イノセント)」を全国に発売。新たな一手を打ち出してから4年目となる2024年、創業252年を迎える。
新生・菊の司の象徴的な存在「innocent」
M&A直後に発売した「innocent(イノセント)」は、本州一の厳しい寒さの中で丁寧に低温発酵させた無濾過生原酒。無濾過生原酒ならではの、吟醸香と甘みが絶妙に絡み合った重厚なボディー、フィニッシュの爽快感のコントラストが特徴的だ。同ブランドの開発にマーケティングの視点から挑んだのが、同社山田社長の御息女で取締役 社長室室長の山田貴和子氏だ。
同氏は東京の大学を卒業後、都内のIT企業に就職。トレンドには理由があり、その波となる一滴は戦略的に構築できる…そんな術を体感しつつあるころ、世の中がコロナ禍となった。その後、M&Aによる再生事業に携わるに至ったという。
「杜氏を含むすべての従業員はベテランぞろい。酒造りは素人の身ですから、ゼロから酒の原料である米や水、酵母に向き合い酒造りに必要な知識を吸収し、同時に、残して「勝てる」商品の絞り込みをへて、商品がより「際立つ」ための理由を追求していきました。かつては50種以上ありましたが、現在3ブランド(菊の司、七福神」、innocentの3ブランド。「心星」は菊の司内の商品) 25商品に厳選。中でも海外展開を視野にその味わいにこだわったのが、「innocent」なのです」(山田貴和子氏)
「innocent」は1カ月以上の時間をかけて醸される日本酒。蔵人にとって醪(もろみ)を搾り上げて出来上がった酒を見る・味わうその瞬間は、かけがえのない感動と喜びをもたらすという。2021年、「その瞬間を一人でも多くのお客さまと共有したい」と「 innocent ‐無垢-」シリーズを誕生させた。「フレッシュで大変希少な日本酒」という好評を得て全国展開に踏み切った。また2022年には、蔵を盛岡市から「自然の恵み豊かな」雫石町に移転。新工場では岩手山の伏流水と隣接する田の米も採用し、新たな深みと味わいをもたらす酒を仕込んでいる。そして2023年、品質を損なわずに酒を急速に冷凍保存できるシステムを導入。これにより、2024年からは本格的に海外展開にも注力する。
M&A前は年間800石、廃棄率は15~20%だった。2022年、雫石町への工場移転を機に「通年醸造にて醸されるフレッシュな生酒」の製造を開始。工場移転後の2023年は1000石で、サステナビリティを踏まえて廃棄率はゼロとなっている。
既存ブランド「七福神」「菊の司」「innocent」もバージョンアップ
盛岡市で多彩な事業展開をしている同社グループには、飲食分野もある。市の中心地・大通1丁目に位置する炭火焼きの「天元」(カウンター6席・個室3種定員計26名)は、接待やデート、ハレの日需要で多くの顧客を抱えている。今年から、同店で提供しているのが、同社の日本酒とのペアリングだ。日本酒のさらなる可能性を見出すために造成した「菊の司ペアリングディナー」で、順調に客足を伸ばしている。
炭火焼ステーキ 天元
岩手県盛岡市大通1丁目9-10レインボービル3階
https://sumibiyakisteaktengen.owst.jp/
「雲丹のバヴァロワ」にはinnocent 40が提供される
【日本酒ペアリングコース】1名2万3,000円(税込)
※仕入れ状況により変更あり
・雲丹のバヴァロワ
・真鱈白子のムニエル
・アンコウのロースト
・シャンパーニュグラニテ
・岩手五ツ星黒毛和牛ヒレグリル~和風おろし出汁~
・山形県産最上牛A5炭火焼ステーキ(ヒレ、ロース、ランプ)、雫石町産焼き野菜
- ガーリックロール
・特製デザート
- 珈琲or紅茶
- パン
菊の司酒造㈱は、1959年12月に岩手県宮古市に遊技場「公楽会館」を創業した㈱公楽のグループ会社。㈱公楽は遊技場を中心に事業を拡大し、現在は岩手県に遊技場を11店舗、宮城県に1店舗を経営。遊技場経営以外にも、不動産事業、再生可能エネルギー(メガソーラー)事業、生活関連サービス事業(ベンリー盛岡西店)を展開。グループ内には、飲食事業やドローンの販売やそれに伴うソリューション事業、十割そばの製麺機の製造・販売などがある。