最上級のラグジュアリーを目指すなら夢は大きく、“世界に誇れるホテル”に
――― サービス面において、スタッフの方に発信されているメッセージは。
一番大事にしているのは、「日本から発信する、世界に誇れるホテルをつくりあげたい」という目標です。私たちホテルでは、「かがみ」という理念や行動指針をまとめた小冊子を作っており、そこに「世界に誇れるホテルブランドをつくりあげよう」と記載しています。現時点ではまだ生意気に聞こえるかもしれませんが、夢は大きく。せっかく京都という歴史ある街で、三井家ゆかりの地で最上級のラグジュアリーを目指すのであれば、世界にも認識されるようなホテルになろうと話しています。また“ 人の三井”という理念のある三井不動産グループのホテルだからこそ、“ 人のホテル” であり続けようと。この二つは、ぶれることなくしっかりと伝えていきたいですね。
――― “人の三井”“人のホテル”という言葉は、どう解釈されていらっしゃいますか。
私はこれまでずっと外資系ホテルにいましたが、その時代から、三井不動産の方と接していて強く感じたのは、みなさん非常に謙虚であるということです。これは素晴らしい文化だなと感じていて、何よりも大切にしていかないといけないところではないかと。ですから日々スタッフと話している時も、必ず「謙虚にいこう」と伝えています。あとは、風通しの良さですね。人の意見をしっかり聞き入れるということを意識しています。何か決定事項がある時も、上層部の人間だけではなく、必ずチーム全体の意見をしっかり聞いてから決断をしようと。これはオーナーである三井不動産でも同様で、ホテル創りの過程においても、お互いにリスペクトを持って対話ができる、ありがたい環境にありました。
――― 楠井さんにとっては、ホテルの業績を上げることが大切なミッションの一つである一方で、このホテルの高いレピュテーションを確立することも同じくらい重要かと思います。
そうですね。利益の確保も重要ですが、まずはポジショニングというか、「このホテルがどういったホテルなのか」ということを、国内外にしっかり認知していただくことが非常に重要なミッションだと感じています。コロナ禍以前はニューヨーク、カンヌなどに私自身が赴き、「Condé Nast」、「The New York Times」など様々なメディアの方とお会いして、スペシャルな記事として掲載していただいていました。古都・京都、しかも三井家ゆかりの地と、ストーリー性が非常に高いホテルなので、海外の方もかなり興味を持っていただいたようです。
――― 確かにこちらは開業前から国内だけでなく海外メディアでも評判になっており、期待値は高かったでしょうね。
お客さまの期待はひしひしと感じます。ホテルについて、土地の歴史から調べて来られたお客さまもいらっしゃいました。開業当初から宿泊でいらっしゃるお客さまはもちろん、近隣の方にもレストランやアフタヌーンティーなど数多く来ていただいています。
――― かなり早い段階からWEB サイトに土地やプロダクトのストーリーを紹介されていましたが、これも期待値を高められた原因ではないでしょうか。
歴史からしつらえの細部に至るまで、お伝えすることが数多くあるホテルですので、それを一つひとつきちんとご紹介していこうという姿勢はありましたね。そのための教育も行なっており、自粛期間の在宅勤務時にはe- ラーニングシステムを使ってホテルについての学習を行なったり、テストも何度も実施しました。今も毎朝の部署内ミーティングの際に、ホテルについての質問と京都検定の質問をお互いに出し合う習慣を続けています。