京都の伝統と美意識、三井家の精神性 世界的デザイナー4人の技と心の結晶
――― 三井家に縁ある土地、本物を追求し尽くしたプロダクトと、まさに三井不動産グループの威信をかけたホテルの開業かと思います。
プロダクトについては、ホテルのブランドコンセプト『日本の美しさと- EMBRACING JAPAN’S BEAUTY -』に基づき、京都の地に息づく伝統文化や美意識、三井家の精神性と伝統、そして世界的デザイナー4 人の手によるデザインが三位一体となり生み出された、歴史性と先進性が調和する、素晴らしい空間だと自負しています。「伝統再生」をテーマに設計して下さった客室やロビーをはじめ、日本の季節の移り変わりを細やかに表現する回遊式庭園、そして、ホテル建設中は一度解体して京都から福井まで運び、宮大工の皆さまのお力をお借りして蘇らせた「梶井宮門」など、私自身が「ここまでするのか」と驚くことばかりの想いと力の入れようです。外から見る限りでは感じさせないそのしつらえが、ホテルに一歩入ると、市中の喧騒から180 度変化するサプライズに皆様とても喜ばれます。
――― 庭園も素晴らしいものが出来上がりました。庭園を歩いたり、庭園が朝、昼、夕方、夜とその見える姿が移り変わる様を見ていると、街中のホテルであるということを忘れてしまいます。
庭園には、かつてここに三井総領家(北家)があった頃から残っている灯籠のほか、枝垂(ルビ:しだれ)桜、景石など、「全国を探して一番状態の良いものを持ってきた」ユニークなものが数多くあります。今、このインタビュー会場である三井家の奥書院を蘇らせた「四季の間」も総檜造で、日本画家 朝倉隆文氏による襖絵、千宗屋氏監修によって毎月入れ替わる掛け軸など、こだわりに満ちた設えが随所にあります。
――― これまで名だたるホテルを経験されたホテリエとして、楠井さんが開業に当たり大切にされた点は。
京都の皆さまに愛されるホテル、京都の皆さまに誇りに思っていただけるホテルになるということを強く意識しています。そのためには、私たちがまず京都の伝統や文化をよく知ることが必要ですよね。ですから、開業準備の頃から皆で京都検定に挑戦してきましたし、着物を着ているスタッフは作法のレッスンも受けています。さらに、ロビーに隣接する「茶居」でお客さまにお抹茶をふるまうために、武者小路千家より先生をお招きしてレッスンもしていただいています。ただ姿形を真似するということではなく、本質を外さないようにと心がけていますね。