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第17 回 今村慎太郎  本当のアレルギー対応を識る 

第17 回 「島のために」で集まる久米島のアレルギー対応

【月刊HOTERES 2016年11月号】
2016年11月11日(金)
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病院と連携した
緊急時対応体制の構築
 
 涼しくなった秋の東京を飛び立ち、那覇空港から30 分ほどで到着した久米島は、まだ強い日差しが降り注ぐ夏。今回の視察直前に襲った台風の被害が至る所に残ったままの久米島に到着してすぐ、観光協会の食物アレルギー対応事務局の古堅留美氏が明るい笑顔で出迎えてくれました。
 
 台風の被害を目の当たりにしながら車で移動した観光協会「あじまー館」でこれまでのアレルギー対応旅行の経緯や仕組みについて説明を受け、公立久米島病院の視察が始まりました。久米島アレルギー対応の特徴の一つがこの病院との連携です。久米島町観光協会のコンシェルジュが食物アレルギー原因食品の詳細ヒアリングを行ない、それに合わせて宿泊先や食事の調整、さらに観光地の提案を行なっていますが、事前にヒアリングしたアレルギー情報を緊急時に病院や救急隊に提供することで、万が一の事故時にも即座に対応できる体制を整えています。
 
「救急隊からは、アレルギー情報を事前に教えてもらえることはとてもありがたいと言われています。幸いにも、これまで受け入れた旅行者の搬送はありません」と言う古堅氏。旅行中は、常に発症リスクがつきまとう食物アレルギー児家族にとって、初めて訪れる地で医療受け入れ体制が整っていることはとてもありがたいものであり、病院から始まった今回の視察は、久米島全体が食物アレルギー児家族を歓迎していることを感じました。
 
10 品目除去で構成される
久米島食物アレルギー対応料理
 
 久米島町では、現在、久米島イーフビーチホテルとリゾートホテル久米アイランドの二つのホテルで10 品目除去(卵、乳製品、小麦、えび、かに、そば、落花生、ナッツ類、大豆、ごま)のアレルギー対応料理を提供しています。メニューは肉・魚・野菜から選択できるようになっており、沖縄のアグー豚や、久米島の港に水揚げされた魚を使った料理は、どれも工夫がこらされた料理で、アレルギー対応食を食べたことのない人でもおいしい料理ばかり。これらの料理は専用の調理器具で料理されています。その地の食材を楽しむことも旅行の楽しみの一つですが、食物アレルギーと生活する家族にとっては、地元の料理を楽しむことはまだまだハードルが高いものです。久米島のアレルギー対応料理はどれも聞いて楽しく、食べておいしく、作り手の思いが伝わる料理ばかりでした。
 
さまざまな要望と
一律ルールのジレンマ
 
 外食事業者にとってアレルギー対応は、調理時の混入リスクのほかに、食物アレルギーが千差万別であることが、対応の難しさの一つの要因になっていると感じます。原因食品や摂取可能量、発症症状の個人差、アレルギー対応方法が社会的ルールとして浸透していないからこそ生まれる当事者のさまざまな要望に応えることに難しさを感じる場面がしばしばあると思います。久米島町のアレルギー対応についても同じであり、安全安心を重視し、かつ比較的“重い”子どもたちを見すえて始めただけに、同じくこの課題にジレンマを抱えています。
 
「食物アレルギーと一言で言っても、症状や食べられる量、そして、家族からの要望は本当に千差万別です。さまざまな要望をいただく中、頭を悩ませるのが比較的軽い人の要望です。専用の調理器具や詳細なヒアリングなど、久米島のアレルギー対応に対して、そこまでしていただかなくてもいいのに…、と驚かれることがあるのです。できる限り要望に応えてあげたい気持ちはありますが、サービスを提供する側としては、安全のために万全を期して対応しなければなりませんし、個別要望はイレギュラーな対応になるため、料理を提供するホテルの事故につながりやすいものです。そういうことを考えると、やはり、安全性を重視したこれまでのルールが今のところ最善の方法だと思います。しかし、このギャップについては、今の悩みの種です。この点はお客さまとのコミュニケーションで解決していくしかないと思っているのですが、まだまだ改善の余地があります」と古堅氏。
 
 病院との連携、専用調理器具の使用など、安全安心という点ではほかの地域にはないサポート体制がある一方、サービスという点では、時に過剰と受け止められてしまうジレンマ。一般的なサービスは多少過剰であっても受け入れてもらえるものでしょうが、この点はアレルギー対応ならではの悩みなのでしょう。そして、社会的なルールとして確立されていないからこそ生まれる悩みなのだと感じます。
 
「島のために」という考え方
 
 沖縄県は修学旅行や観光客が多いことから、ここ数年アレルギー対応への取り組みが盛んな地域ですが、この取り組みが育まれる要因を端的に表している言葉が、今回の視察で度々耳にした「島のために」という言葉だと思います。久米島町全体の魅力のために事業者が集い、島の魅力を作ることができれば、最終的に自分たちに還元されるという考え方こそ、久米島町がこれまでアレルギー対応を継続してきた本質であると感じました。全人口の数パーセントと言われる食物アレルギーの人たちを地域や社会全体で支え合う形を目の当たりにした視察となりました。
 
 最後に、久米島町観光協会、久米島イーフビーチホテル、リゾートホテル久米アイランド、サイプレスリゾート久米島の皆さま、台風の被害があったにもかかわらず、ていねいなご対応と意見交換に参加させていただき誠にありがとうございました。

沖縄久米島食物アレルギー対応旅行
http://www.kumejima-qol.com/

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