シャッター街となった商店街の復興にも取り組む日南市。企業進出は、地元への消費貢献も期待がなされている
雇用創造と「日本一組みやすい自治体」
への取り組み
内田 2013 年より現職として4 年目となりますが、これまでの取り組みについて伺えますか。
﨑田 市長として目指したのは「若い人が残る地域社会」です。そして就任後一番に行なったことは、選挙公約でも言っていたことですが、マーケティング専門官という民間人の登用です。若い人が残る=人口流出に歯止めをかけるためには、経済の活性化が重要課題でした。そこで、マーケティングを専門とする機関を設け、「日本一組みやすい自治体」を意識したブランディング戦略を行い、地域と企業の持つリソースを活用し一緒に事業を作っていくことで、効果的なPRや外貨の獲得を実現できるのではと考えました。また、地域課題の解決に向けた取り組みを行う中で、雇用の創造も活性化における大事な要因ですから、企業誘致を意識した取り組みにも力を注いできました。
内田 「日本一組みやすい自治体」に向けて、具体的にどのようなことを行われたのでしょうか。
﨑田 現在、日本全国には1700 を超える数の自治体が存在します。その数ある自治体の中で組みたいと思わせるイメージ作り、マーケティング戦略が必要です。その戦略としては、まず1、2年目に日南市のイメージ戦略として、企業と積極的にコラボすることで、日南市とコラボすると「かっこいい」と思っていただくこと、2、3 年目は日南市と企業のコラボを通してWin-Win の関係を築くこと、3、4 年目には企業との良好な関係を仕組み化するとして、さまざまな取り組みを実施してきました。たとえば、月間2 億PV を誇るお笑い投稿サイト「ボケて」では、日南市が提供した写真についてユーザーがボケのコメントを載せていただくといった企画だったのですが、自治体、そして市長自らがお題として参加したという意外性が関心を呼び、マスコミに注目されたことで、企業からお声かけしていただく機会が増えるといったこともありました。他にも、地域資源である飫肥杉を世界へ発信するためのプロジェクトに、当時、地方自治体では珍しいクラウドファンディングをつかって資金調達をしたり、市長室を貸し出すといった積極的な取り組みは、多数のメディアに取り上げられることとなり、狙いどおりの結果となったところです。その結果、日南市への問い合わせの数が増加し、今年に入り8 月までに7 社のIT 企業がすでに進出を決定したところです。「I T」と一言に集約をしていますが、SNS、アプリ、ゲーム開発など、人材を採用するうえで競合しないような審査と配慮は行なっています。誘致企業の規模は、数名採用から100 名単位までとさまざまですが、企業誘致における実績と信頼は確実に積み重なっています。また、企業誘致については日南市における有効求人倍率の実情も少なからず影響している部分があることを、この機会にご理解いただきたいと思います。
内田 どういった影響があるということなのでしょうか。
﨑田 日南市における有効求人倍率は1 倍を超えており、必ずしも働く場がないというわけではないのですが、細かく見ると事務職は0.2 ~ 0.3 倍、他業種は2 倍を超える状況となっており、ミスマッチが生じています。そしてこの0.2 ~ 0.3 倍の中に入れなかった人たちは同じような仕事を求め、結果県外へと流出してしまうのです。傾向と対策というわけではありませんが、事務職に対するニーズが強いのであれば、日南市としてはより雇用吸収率の高い職種または業務形態を有する企業に進出していただき、これが結果的に若い人を地域にとどまらせることにつながっていくと考えています。