ビジネスのすべてはレストランに多様な経験が生きる時代
----唐渡氏の経営スタイルには、ビジネスのアイデアが溢れていると感じます。
私はビジネスの基本はすべてレストランにあると考えています。利益をどう残すか、お客さまをどうやって満足させるか。そこに真剣に取り組むのは、どんなビジネスでも同じではないでしょうか。それに今は、ビジネスも料理も垣根を設けず、「あれこもこれも」できる人が求められる時代に来ていると思います。
私が学んだ当時の調理師学校ではよく、「あなたはホテルの料理人になりたいですか」「町場の料理人になりたいですか」と先生から質問されました。でも、今はそんな時代ではありません。私自身、30 代前半で外資系ホテルの料理長をやらせてもらった経験があります。最初はフランスの3 ツ星レストランの日本出店ということでそのホテルに入ったのですが、阪神大震災でその店が閉店したため、望まずバンケットの料理長になったのです。辞令に対しても、1 年間やらせていただいて辞めさせていただきますと、生意気なことを宣言しましたが、10 人、20人の料理人を使って、100 人、300 人、500 人の料理を合理的に提供するのは大変難しく、生産戦略、原価管理、安全管理なども含めて、1 年ではできないことがたくさんあり、結局4 年間務めさせていただきました。その経験が今に生きています。ですからホテルと街場、ビジネスと料理と線引きせずに、なんでも幅広くできたほうがいい。そこからもっと可能性は広げていけると思います
----飲食業界全体の成長に向けて、どのようなことが必要だと思われますか。
コロナ禍を受けて飲食業界が経営的にも社会的にも、まだまだ弱い業界だと痛感しました。今後は、後進の方々がきちんと生活し、夢を追いかけて大きな成功も納められる、そういう業界にしていかなければなりません。今後、飲食業界もAI 化などで大きく変わっていくでしょう。実際、新しい技術や機器もどんどん生まれています。そういったものを、一度使っただけで「この機械は使えない」と切り捨てるのではなく適した使い方を探す柔軟性、より良い機器を作り上げる気持ちを持てばよいと思います。弊社のモットーは「今日の最高は明日の最低」です。今日は最高のベストを尽くしますが、明日はもっと良い方法はないか、一からすべて見直す気持ちで取り組むという意味です。さまざまなことに柔軟に対応し、変化を繰り返し、新しいことを発信する先駆者であり続けたい。そして食の世界を発展させて、飲食業が夢ある世界であり続けるように、情熱を持ち挑戦を続けます。