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HOTERES エンターテインメント 究極のジャパニーズエンターテインメント、 花火の現在と未来

【月刊HOTERES 2021年04月号】
2021年04月23日(金)
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大空を彩る大玉の尺玉花火。“死者を鎮魂する”ということで日本では夏に花火大会が多く開かれるが、今ではイベントのオープニングやエンディングを彩るマストツールとしてもグローバルに愛されている
大空を彩る大玉の尺玉花火。“死者を鎮魂する”ということで日本では夏に花火大会が多く開かれるが、今ではイベントのオープニングやエンディングを彩るマストツールとしてもグローバルに愛されている

㈱若松屋 取締役副社長
佐野 明正 氏 A k i m a s a S a n o(左)
1983 年、㈱若松屋入社。入社後、玩具花火の企画販売とともに大型花火事業にも従事。2004年、若松屋東京支店開設に伴い活動拠点を愛知から東京に移す。副社長就任後、花火に携わってきた経験を活かしつつ様々な花火企画を主導。花火の力を活かしすべての人々に楽しさと感動を伝えられる企画展開に尽力している。新たな時代に対応する花火の発信方法も視野に活動中。
 
㈱若松屋 東京支店支店長
竹内 直紀 氏 N a o k i T a k e u c h i(右)
異業種における就業の後の2009 年、㈱若松屋入社。当初より玩具・雑貨の営業、企画、生産を行う。ゼロから物を作り上げるのが好きな性分から19 年頃からは、本業の花火企画にも参画を始める。20 年からは本格的に広報活動もスタートさせ、創業80 年をこえる花火屋の魅力を各方面に届けつつ、現在、新しい時代に即した花火屋のあり方を模索している。

花火大会を彩る尺玉と呼ばれる花火は星と呼ばれる火薬の球をデザインにそって詰めることで作られる。デザインや詰め方のバランスに花火師の個性が現れる
花火大会を彩る尺玉と呼ばれる花火は星と呼ばれる火薬の球をデザインにそって詰めることで作られる。デザインや詰め方のバランスに花火師の個性が現れる

180 度に動くフレーマー。動くものは珍しく、演出効果は抜群。㈱若松屋には花火以外にこういった演出用機材での企画も相談できる
180 度に動くフレーマー。動くものは珍しく、演出効果は抜群。㈱若松屋には花火以外にこういった演出用機材での企画も相談できる

日本が世界に誇る伝統美術のひとつである花火。オリンピックやワールドカップ、大型フェスに世界各国で行なわれる年末のカウントダウンイベントなど日本の花火が世界を代表するイベントの場に求められるようになって久しい。そこで国内でも最大手のひとつである花火企業である㈱若松屋の取締役副社長の佐野明正氏と東京支店支店長の竹内直紀氏にエンタメとのポテンシャルなど花火業界についてお話を伺った。

 
コロナ禍で改めて感じた花火人気
 
 今や日本の花火は世界でも“Fireworks”ではなく“HANABI”として愛されるほどそのクオリティの高さから人気があり、未来型花火エンタテインメントの「STAR ISLAND」などプログラム自体が世界へ販売されるケースも出てきている。そんな花火を支える業界について伺うと、「花火業界というのはまずいわゆる尺玉を使う花火大会の業界とおもちゃ花火と呼ばれる、みなさんがスーパーなどで購入して楽しむ花火の2 つの業界から成り立っています。その中で弊社は国内で唯一、花火大会用打ち上げ花火の製造とおもちゃ花火メーカーを両方手掛けています。さらに、全国の花火師のネットワークを持つのが強みなのですが、こういったチャネルを持っている珍しい会社なんです」と佐野氏。
 
 花火大会業界はコロナ前まで年々集客力の高さから大型花火大会が各地で企画され、需要も右肩上がりに上がっていた。ただこの集客力にも悩ましい点があり、年々警備費が高まることで花火予算の縮小が求められることもしばしばだったという。実際、昨年行なわれるはずだった東京オリパラ2020 に際し、日本各地の大型花火大会が中止となった理由も日本全国からオリパラの警備に警察官が東京に動員される故、開催地の警備が手薄となり来場者の安全が保障しかねる点だったという。加えて地方の盆踊りやお祭りなど過疎化の問題から付随的に開催が難しくなる小さな花火大会も少なくないそうだ。そんな中到来したコロナ禍は業界にとってどんなものだったのだろうか?
「やはり人が集まるということで、慰霊の花火のみでしたが上げた『長岡花火』以外はほとんどの花火大会が中止となりました。ただもともと昨年はオリンピック関連でいつもよりは開催数が少なかったのが不幸中の幸いだったかもしれません。そんな中でみなさんに元気になってもらおうと業界の若手が開催したのが「CHEER UP ! 花火」です。その後各地でシークレット花火やSNS を使ったLIVE 配信をして本当に喜ばれました。また昨年はおもちゃ花火の売り上げが昨対を超えるほど大きな伸びを見せ、やはり皆さん花火が好きなんだと改めて感じる面もありましたね(佐野)」。
 
 
規制の壁、動画の限界
 
 ところで人気の高まりと共に立ちはだかる“現実”はほかにもあるという。
「やはりなんといっても法律の壁は大きく、特に都心部で大型花火を上げることは特例を除くとほぼ不可能といっても過言ではありません。規制緩和の声や動きもありますし、われわれもそれに向けて政府の方たちとも議論を重ねていますが安全第一ですから慎重にならざるを得ず、なかなかというのが現状です。『台北101』やドバイのカウントダウンで行なわれるようなダイナミックな花火を東京タワーやスカイツリーでやれたらかっこいいんですけどね(佐野)」。
 またコロナ禍で増えたライブ配信の花火も挑戦したことで見えてきた壁があるそうだ。「花火は発光の部分だけではなく、打ち上げ音で感じる体感やニオイなど五感で楽しむエンタメなのでやはり光と音の部分しか伝えられない動画だとその魅力が数割減となってしまうところがあります。また花火がきれいに見えるにはある程度風が吹いていることが必要なのですが、風が吹かなかったりすると画面がひたすら煙だけとなってしまう場合もありますし。
 そうなると北京オリンピックのように実際の花火とCG を組み合わせた方がいいのではないか? とか、それであればライブ配信でなくてもいいのでは? などまだまだ試行錯誤というのが現状ですね。ただ可能性はあると思うので今後、リアルな花火大会が復活した後もリアルとバーチャルを組み合わせた魅力発信をできる仕組みを作りたいなと思っています(竹内)」。
 
総合エンターテインメントである花火のチカラ
 
 それらを踏まえた上でwith コロナ、アフターコロナにむけてエンタメとしての花火はどこに向かえばいいのだろうか? 「花火はそれ自体が総合エンターテインメントですし、老若男女、ジェンダーも選ばずに楽しんで貰える“世界共通言語”である強みがあります。熱海や諏訪湖、洞爺湖のように定期的な花火大会の開催を観光資源にすることも一つですし、リゾートホテルなどは富裕層向けにプライベート花火大会をカスタマイズするのもいいのではないでしょうか? 火薬を使わない花火であるスパークラーや市販のおもちゃ花火を活用することで都心部や室内でも華やかな花火演出をほどこすことは大いに可能なので、伝統的な打ち上げ花火と共に今後はそれらを活用した今までにない面白い花火企画をいかに作れるか? も大切になってくるように感じています。
 先日もYoutuber の東海オンエアさんと花火動画の企画をご一緒したのですが、その際は仕掛け花火と尺玉を組み合わせたご提案をしました。そこに編集や企画のプロの手が加わることで花火の魅力が何倍にもアップするのを感じ、まだまだ花火の持つ可能性は大きいと感じた次第です。また線香花火やススキ花火のように日本発祥の花火を文化コンテンツとしてもっと発信していくのもいいと思います。手持ち花火の文化も日本独特のものなので海外に向けてそこをもっとアピールするのもいいかもしれません。あとは病院や介護施設に入居されてる方など、花火大会に足を運べない方むけにホスピタリティとなるエンタメとしての花火も提案していきたいですね(佐野)」。
「花火業界は伝統芸術の世界なので今まで革新ということにあまり目が向いていなかったのですが、コロナによってちょっとそれが加速したのを感じています。その中で花火の本質は守りつつ、『あっ、花火が変わったな!』という新しい感動や楽しさを作りたいですし、作るべき時を迎えていると思っています。
 現在、花火のワークショップや線香花火を作る花火教室などを不定期開催しているのですが、コンテンツはたくさんあるのでそれらを今までにない提案につなげたいです。さらに異業種の方たちとコラボすることで見えてくる花火の新たな魅力やエンタメ性があると考えているのでより積極的に、いろんなジャンルの方たちと花火企画を作れたらと考えています(竹内)」。
(取材・本誌 毛利愼 原稿 飯野耀子)

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