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2020年11月20日号 トップインタビュー (株)パレスホテル 専務取締役 パレスホテル東京 総支配人 渡部 勝 氏

トップインタビュー (株)パレスホテル 専務取締役 パレスホテル東京 総支配人 渡部 勝 氏

【月刊HOTERES 2020年11月号】
2020年11月18日(水)
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需要は着実に回復している

---4月11日に大幅な縮小営業に入られ、5 月29 日より段階的に営業を再開されました。特に東京では新型コロナウィルス(以下「コロナ」)の影響が強く残る市場ですが、パレスホテル東京の業績はいかがでしょうか?

 本格的な営業再開以降、時間を経るごとに業績は少しずつですが上向いています。
宿泊はGoTo トラベルのおかげもあり、稼働率は10 月には40%に戻り、11 月は現在オンハンドで47%(取材日時は10月29 日)。最近の予約傾向として、複数日予約を確保し、様子をみて宿泊先や宿泊日を決定するゲストが多いため、11 月・12 月については先行き不透明ですが、予約はさらに伸びていくと期待しています。単価については、マーケットの状況が変わったからと、大きく下げることはしていません。インバウンド需要が強かった昨年のレベルには遠く及びませんが、営業再開後もADR は5 万円以上を維持しています。

また、コロナ以降どのホテルも同様の傾向だと思いますが、日本人のレジャー利用が大半のため、一室2 名以上の利用が多く、朝食喫食率も80% を超える状況です。また多くが1 泊のご利用で、ほとんどのゲストが入れ替わりとなるなど、過去に経験したことのない運営の難しさに直面しています。したがって、フィジカルディスタンスを守り、朝食でゲストをお待たせせず、ホテルブランドを毀損することのないよう、週末の稼働率は75%~ 85% を上限としています。収益面を考えれば、本心としてはできるだけ多くのお客さまをお迎えしたいところですが、朝食やチェックイン・チェックアウトのオペレーションとお客さまの満足度を鑑み、判断しました。

レストランは需要が戻ってきたという手応えを最も感じています。10あるアウトレット全体の売り上げも昨年比で9 割近くまで戻ってきています。コロナの影響で営業時間は短縮していますので、時間あたりの売り上げは上がっていることになります。さらに、朝食利用を除けば、オールデイダイニングは昨年よりも売り上げが伸びています。そうしたこともあって、料飲ビジネスはこれまで以上にギアを上げて走っている状態で、例えば需要の高いアフタヌーンティーは館内4 つのアウトレットで実施し、売り上げに寄与しています。

また、このコロナの影響を受け、ペストリーショップの需要が大きく伸びました。オンライン販売の商品を拡充し、ドライブスルーなどのテイクアウト商品も好評です。また、今まであまり積極的にPRしてこなかったバルコニー付の客室を前面に出し、そこでのインルームダイニングもとても高い評価を得ています。今までも人気だったレストランやバーのテラス席も、コロナ禍でさらにその価値を増しています。

---バンケットビジネスは需要がほとんどなくなっているという話をどこでも聞きます。その点、先ほどインフォメーションボードを見たらいくつかの宴会が入っていました。戻りを感じていらっしゃいますでしょうか?

いえ、一般宴会に関してはまだ戻りを感じていると言える状況ではありません。われわれ同様に大きな宴会場を抱える一部のホテルではホテル主催のディナーショーの再開も計画されていますが、当ホテルのバンケットルームは一回りサイズが小さいため、感染防止のガイドラインに沿った席数での営業スタイルでは、収支の面で実施は難しいです。

一方、婚礼は徐々に動きが見られます。当然昨年と同様のペースではありませんが、10 月は40 組の挙式があり、11 月は70 組の挙式が予定されています。一組当たりの人数は減っていますので、今後いかに付加価値をつけ、単価を上げていくかが当面の課題です。また、コロナを受けてこれまで受注していた婚礼のスライドも多くあります。その結果、2021 年にはこれまではターゲットとしていなかった年間1,000 組の実施にチャレンジしていきたいとメンバーと意気込んでいます。個人需要を大切にしてきた“ 資産” が今パレスホテル東京を支えている

宿泊、レストラン、宴会、婚礼など総合的に見ると、個人需要のありがたさを強く感じています。ビジネス需要はもちろん大切ですが、開業から個人需要を大切にしてきました。
そのアセット(資産)がまさに今生きています。

弊社は立地の関係もありリニューアル前はビジネス需要への依存度がとても高いホテルでした。それもあり、2012 年の再開業の時に「ビジネス+ライフスタイルへ」をコンセプトにしてきました。確かにインバウンド需要が強かった時期は海外のビジネス需要に絞った方が数字は良かったかもしれませんが、今はまさに日本人個人のゲストに助けられています。

 

---ところで、1 カ月ほどの緊急事態宣言中はどのような取り組みをなさっていたのでしょうか?

縮小営業中はホテル幹部でリブインしてディスカッションをしておりました。3 月末に新たに社長に就任した吉原をはじめ、部門長と共にこれからのパレスホテル東京の在り方について議論を重ねることができました。真っ暗なバックスペースで、テイクアウトの食事を食べながら、まさに「同じ釜の飯を食いながら」といった感じです。もちろん先行きへの不安もありましたが、良いリセットの機会となりました。こんなことができたのは2012 年の再開業の準備室時代以来です。

---素敵なお話です。人々の価値観含めて色々なものが変わる中で良いタイミングとも言えるかもしれませんね。

そうですね。2012 年の再開業の際にも大きく変わりましたが、2022 年にはパレスホテル東京が開業10 年を迎えます。その時に、どうありたいか。ほかのホテルを見ると、たとえばパークハイアット東京のように25 年を過ぎても色褪せていないホテルもあります。私たちもそうありたいと思っています。

縮小営業中はスタッフとともにバックスペースのペンキ塗りもしました。以前、ザ・ペニンシュラ東京で総支配人をされていたマルコム トンプソンさんから同様のことをなさって、スタッフとの繋がりを作っていると聞き、感銘を受けたことを思い出しました。皆が離れている時期でしたので、良い機会だとボランティアを募り、ペンキ塗りやバックヤードの清掃をしました。施設部のスタッフがホームセンターでペンキを買ってきてくれて、さらに社長の吉原がメンバーのためにハンバーガーを大量に買ってきてくれたり。“繋がり”という意味で非常に良い時間となりました。

---その活動はテレビなどでも取り上げられていましたね。リニューアルオープン以降良い企業文化が醸成されているのを感じます。休業・縮小営業期間中にどのような取り組みをされているかは、大きな差があると多くのホテルの取り組みを見ていて感じています。

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