ホテルは社会の変化に伴って、その機能を拡大させ、発展させてきたが、いよいよ多様化の時代を迎えた。となれば、ホテルに求められるものも多様性だ。あらゆる人々を温かく、優しくおもてなしする精神がますます必要になってくるようだ。
◎文・富田昭次(とみた・しょうじ)
ホテル・旅行作家。近著に『ホテル日航東京 ウエディングにかける橋』、中村裕氏との共著で『理想のホテルを追い求めて ロイヤルパークホテル和魂洋才のおもてなし』(いずれもオータパブリケイションズ)がある。
車イスの新婦を温かく祝福
今年4 月20 日、京王プラザホテルがメディアに向けて、一つの模擬挙式を披露した。足の不自由な新婦が車イスで結婚式を挙げるという設定での挙式である。
同ホテルでは、1988(昭和63)年に第16 回リハビリテーション世界会議の開催を受け入れて以降、さまざまなバリアフリー対策に熱心に取り組んできたが、この挙式(11 のバリアフリー特典を付与して5 月から提供)もまた、同ホテルならではの「おもてなしの精神」の発露であったのだ。
さて本項では、1 年間にわたって「おもてなしの精神」を歴史的に考察してきたが、今回の最終回では、近未来を少し視野に入れながら、その精神の多様性を探ってみたい。