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松沢良治 レポート

シンガポールと同じ大きさのきれいな湖  「千島湖」そこが中国産キャビアのふるさと

【月刊HOTERES 2017年06月号】
2017年06月23日(金)
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キャビアの生命線はきれいな水
 
 最も高価なキャビアはベルーガとされている。キャビアを取り出すまでに15年の歳月を必要とするからだ。これはセブルーガの倍以上だ。ベルーガとハイブリッドを合わせて年間50トン生産するが、これは全体の70%を占める。いわゆる企業の生命を握るほどの中核製品に育っている。
 
 キャビアの生命線はチョウザメの住む水質にある。リリーさんが話したように山々に囲まれた湖は降る雨が伏流水となって流れ込んでいる。そのためきれいさだけでなく栄養分も豊富。中国でも最もきれいな湖とされている。かつてチョウザメが豊富とされていたアムール川は流域の開発などが進み以前のような良質のキャビアが取れなくなっているのは周知の事実。キャビアにはきれいな水が一番大切だ。これらのことを考えると今後中国産キャビアはイラン産、ロシア産などと並ぶ生産地として知名度を高めていくものと思われる。
 
 ここで生産されるキャビアは5 種類。その中で最もアジア人が好む味はハイブリッドだ。ハイブリッドは濃厚でクリーミーだが、どちらかと言えばしつこくなく、塩分も少ない。日本人も好む味だ。さらに言えば値段もリーズナブル。輸入する会社によっては塩分濃いめにと要望するケースもあり、要望には対応できるとのこと。一方ベルーガなどは、伝統的なキャビアは味が濃厚でヨーロッパ人が好むという。
 
夏は冷たい場所に引っ越し
 
 チョウザメ全般の生産工程を見てみよう。これまではドイツからキャビアの受精卵を買ってチョウザメを育ててきた。1~ 2 年前からは自社工場で受精卵ができるようになってきた。ただし繰り返すと血が濃くなり問題という。基本は輸入して血が濃くならないようにしなければならないが、自社工場での生産も研究している。
 
 受精卵は3 年するとオスかメスかが判別できる。この時点でオスは処分する。メスが成長しキャビアを取れるようになるまでの生存率は99%と高いものの、最も心配なのは病気だ。無事に成長させるのに一番難しいのは水の温度調整という。チョウザメは水温の低い水を好む。キャビアの名産地が緯度の高い場所になっていたのはそのためである。
 
 シンガポールほどの広い湖でも夏になると水温は30 度にもなる。チョウザメは暑さに弱く、暑いと病気になる。そのため、水温が上昇する夏前に冷たい場所に移動させるようにしている。千島湖には冷たい水が常に山から流れ込んでおり、夏でも15 度以下の場所があるというのだ。
 
 チョウザメの引っ越しは、一尾一尾を丁寧にボートに移してゆっくりと移動する。移動期間は5 月から9 月まで。10月になったら元の場所に戻すのが通年の仕事。これを成魚になるまで毎年繰り返す。

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