福永　山城さんが創り出された世界観にあこがれて“働きたい”という方も、多いのではないでしょうか。
 
山城　マイナビのからのエントリーで3万人に達しました。どんなに人数がほしくても採用においても妥協はしません。2016 年の採用は9 人です。全体的な雰囲気や表情など、トリートの雰囲気にそぐわない方はどんなにキレイな方でも採用しません。私たちの考えに合わずに辞めていくことで波紋が残ることを避けるためにも妥協しないのです。もちろん個々の個性は大事なことですが、磨けばトリートの世界観を吸収し、きっと光るだろうと思われる方を見つけ出しています。入社後は最短で最高のパフォーマンスを得られる新入社員カリキュラムで徹底した教育を行ないます。世界観を崩さないためにはスタッフのヘアメイクにもこだわります。髪の毛のカラーはもちろんのことエクステの本数や、爪も手を裏返して見える爪の長さまで決めています。営業過ぎない上品な言葉遣いやハンガーの持ち方、ドレスの見せ方やドレスを納めるピッチまですべて徹底しています。
 
福永　9 人の採用とは厳しき門ですね。またブランディングにおけるヘアメイクや立ち居振る舞い、言葉遣いなどの徹底ぶりにはおどろきました。スタッフの人数や店舗が増えると、どうしても店舗の責任者により店舗の雰囲気が異なったり、個々の感性を持ち出すことでブランディングの軸がぶれてきます。すべてにおいて個々の意識は反映させないことが、揺るがないブランディングを創り上げているのですね。
 
山城　スタッフに求めているのは、徹底した本物のコーディネーターになることです。ミーハー的ではなく、本物を追求するためにも厳しいチェックもクリアしていかなければなりません。半年に１回、人事が店舗に入り夢に向かっているかのチェックに入ります。前向きにチャレンジしているスタッフにチャンスを与えるためです。人事は開業当初よりずっと勤めている方で私の分身的な存在ですから、私が求めている人材や世界観を十分に理解していますので、スタッフを見る目もぶれていません。私自身、プラン・ドゥ・シーでさまざまな機会をいただき、高いハードルを越えてきました。こんなことできないと思っても、与えられた新たなステージに挑戦し続けてきました。トップの志が高く、行動力、実行力が優れていれば人は動きます。経営陣の思いを理解しくれます。理解していただくため、そして世界観を理解していただくために8 個の大切な言葉をまとめた本も制作しました。また女性心をくすぐるメッセージをファイルのデザインにもこだわり発信しています。随所に世界観を感じていただけるよう工夫をしています。
 
福永　とてもきめ細かな配慮をされていますね。夢を与えることはとても大切なことです。ウエディングプランナーも入社当時は夢を抱いてキラキラしているのですが、いつしかキラキラ感が薄れ、わずか数ヵ月で辞めたり、不平不満を漏らすようになります。顔の表情にもストレスが現れてしまうプランナーもいます。私の子どもは高校野球を3 年間やり続けてきました。とても厳しい練習で有名な高校ですが、あこがれの甲子園を目指して、また選手になれなくても一生懸命自身の夢に向かって頑張ってきました。くやしい思いもあったと思いますが、夢を持ち夢に向かっていくことで随分と成長しました。ウエディング業界も山城さんのように夢に向かってチャレンジし続けている人や、チャレンジさせてくれる上司の存在が人の成長へとつながるのだと思います。
 
山城　私は本当に恵まれていました。次から次へと新たなステージが与えられ、口出しも一切ありませんでした。すべて自己責任で問題に取り組み、自身で開発を行なってきた結果、今日があります。
 
福永　そして今は独立され、新たなチャレンジをされていますね。
 
山城　女心をくすぐる世界観の追求は昔も今も変わりません。現在はデザインという大きな枠組みでアイテムや空間、Web デザインまで幅広いジャンルにチャレンジしています。また昨年はゲスト向けパーティドレスのレンタルショップも東京・南青山にオープンしました。パーティに招かれたゲストももっとお洒落して楽しんでほしいという思いからです。海外で行われる最先端のファッションショーで着ているようなパーティドレスをお求めやすいレンタル価格で提供しています。パーティドレスはアパレルの分野です。ウエディングドレスとはまた異なります。まさに初めての挑戦です。仕入れの時期も異なりますので買い付けシーズンには月2 回、アメリカにいかなければならない状況ですが、母やスタッフの支援をいただきハードなスケジュールで活動しています。ザトリートドレッシングのウエディングドレスのセレクトと地方都市を主軸としたウエディングドレスやメンズの卸し、そしてパーティドレス、そしてアクセサリー仕入れ、販売も手掛けています。子どもたちも成長する中で、もっと側にいてあげなくては、いう思いはありますが、現実的にはなかなか時間がありませんので、ときには一緒に海外へ行き、娘たちとの時間を持つようにしています。
 
福永　国内外とまさに駆け巡っていますね。同じ価値観、世界観を持つ分身的なスタッフや山城さんの仕事を理解してくれているお母様がいらっしゃるからこそ、多忙な日々もこなせているのでしょう。最後に今後の展開や思いをお聞かせください。
 
山城　もっと楽しく働ける環境作りをしたいですね。そのためには生活のバランスを守り、健康に働ける時間管理や出産後でもいつでも復帰できる労務管理の改善なども欠かせません。いつまでもモチベーション高く、夢のある職場を作ることです。スタッフがいつもワクワクしていられる、そんな企業を目指していきたいと思います。ウエディングドレスやアクセサリー、店舗という目に見えるものだけではなく、人間的な内面から”トリートの人はすごいね”と評価される企業に成長していきたいと思います。事業的には衣食住問わず、女性が美しくなれるアイテムをデザイン、プロデュースしていきたいですね。これからもいろいろな人と出会い、いろいろな物を見て感性を磨き、知識も含め本物の価値を追求していきたいと思います。福永　常に前向きで夢を追い続けてい感じました。また、こだわり抜いた世界観とその世界観を理解させるためのきめ細かな規則やスタッフの皆さんへの配慮に感銘するとともに、ブランディングにおける人材育成の極意を教えていただきました。本日はありがとうございました。
 

㈱YOKO YAMASHIRO Designs
CEO 兼チーフディレクター
山城 葉子 氏
2007 年、ウエディングプランナーを経て海外ブランドのセレクトウエディングドレスショップ「THETREATDRESSING」を立ち上げ。買い付けるドレスは年間で1000 枚におよび、全国の主要都市に12店舗展開、年間5000 組以上の花嫁の手伝いをするショップに成長。ウエディングドレス以外にも、ジュエリー、ユニフォーブランド、ドレスブランド、アパレルセレクトショップなどを展開。バイイングはアパレルウェア、アクセサリー、生地やインテリアなども幅広く手掛けるまでになり、年間100 日以上を海外で過ごし、常に世界のトレンドに触れている。12 年独立、「心をくすぐられる世界を創造する」をコンセプトにブランディングプロデュースをはじめ、パッケージ、ブランドのロゴなどのグラフィックデザイン、撮影やWEB サイトのディレクションなど、さまざまな分野に幅広く手掛けている。目に見えるもの、手に触れるものを「心をくすぐられる」デザインにし、クライアントや顧客までも幸せにするデザインを生み出している。

㈱フェイス　代表取締役
福永 有利子 氏
レストラン・ゲストハウスのウエディングプランナーから各現場の管理職としてマネジメントを担い、確実に業績を伸ばしてきた。2003 年にウエディングプランナー養成スクール講師をはじめ、06 年より大学にて非常勤講師として教壇に立ち、現在も教鞭を執っている。06 年堂島ホテル婚礼部長に就任、その後08 年同ホテル副総支配人に昇任。09 年には㈱フェイスを設立し、代表取締役に就任。現在は、ホテル・ゲストハウスを主に成約率向上を目的としたトレーニングや集客戦略立案・実践支援などのコンサルティングに加え、ウエディング全般にわたる支援を行なっている。著書・ウエディングプランナーじゃない、アカンのは上司や！ 悩める管理職のアメムチ19 の育成術