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第7回 徳江順一郎の「旅館革新の旗手たち」

「天空の森」「忘れの里 雅叙苑」「田島本館」オーナー 田島 健夫 氏/ディレクター シャスリー 範子 氏

【週刊ホテルレストラン2015年11月13日号】
2015年11月13日(金)
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田島 例えば、昨日お泊りいただいた雅叙苑で、お食事に出させていただいた竹のお箸ですが、なぜあれを使うことになったか、お分かりになりますか?
 
徳江 やはり「和」の風情をかもし出そうと思ったからでしょうか?
 
シャスリー 普通はそう思いますよね。でも、ちがうんです。
 
田島 実は、売り上げがどんどん落ちてしまって、箸も買えなくなってしまったからなんです。
 
徳江 なんと! それはおどろきの理由です。
 
シャスリー 竹ならそこらじゅうにありますからね。
 
徳江 ですが、結果的にはそれが雅叙苑の雰囲気を盛り立てていますね。
 
田島 そういった意味では、私は決して宿の経営に向いているとは思えません。
 
徳江 とはいうものの、昨夜も私のゼミ生の誕生日ということで、急きょ「花束」ならぬ、野菜でできた「菜束」をご用意くださったりして、やはりお客さまを喜ばせる気持ちなどは、全体に浸透していると感じます。
 
田島 考えてみてください。手間とコストをかけて花束を用意するのもいいのですが、花束は東京でも簡単に手に入りますよね? でも、菜束は難しいでしょう? そして、私どものところには野菜はいくらでもあるので、やはりコストがかからないんです。
 
徳江 無理にコストをかけて、無理に喜びを引き出すのではなく、身近なものを組み合わせて精一杯のことをする、ということですね。
 
田島 うまくいかない期間が長かったため、こういったことを自然にやるようになったのかもしれません。
 
徳江 それはまさに、料理の世界でいうところの「ご馳走」や「精進」、つまりお客さまのことを思いつつ馳せ走って用意をし、制約のある中で精進してもてなすという心意気につながりますね。
 
シャスリー だから、狙ってやったというわけではないんです。
 
徳江 カナダの有名な経営学者であるミンツバーグが「実現された戦略」という表現をしていますが、田島さんのやり方はまさにそれです。
 
田島 私自身は、この土地の良さをなんとか守り伝えたいと思っています。その意味でも、こうした方向性は変わらないと思います。
 
徳江 実は、昨夜泊まらせていただいた雅叙苑の夕食で大変に驚いたことがあります。
 
シャスリー 先生がそうおっしゃると興味あります。
 
徳江 今まで、いろいろな宿に泊まらせていただきましたが、魚のお刺身が一つもなかったのは初めてです。日本の旅館はどうしても魚の刺身を出さざるを得ない状況にありますが、鶏の刺身はあっても魚がないというのは非常に思いきりましたね。
 
田島 この辺は鶏がうまいですから(笑)。
 
徳江 その意味では、徹底的に地元のものにこだわっているわけですね。
 
田島 私は、観光とはそういうものだと考えています。地元で長く愛されてきたものを、外からいらっしゃった方々に楽しんでいただく。そのために、さまざまなソフトを考えることこそ、「観光」なのではないでしょうか。
 
徳江 最近になってやっと、こういった「土地の文脈」を大事にする方向性がだんだんと増えてきています。ただ、昔からそうしているところはあまりないんですよ。
 
田島 日本の観光産業を見ていると、どうも「コピー産業」なんじゃないかと感じることがあります。どこに行っても同じものばかりで…
 
徳江 日本人は「横並び意識」が強すぎますからね。
 
シャスリー フランスでは考えられないことですよ。
 
田島 だからといって、その土地のものを提供することだけがすべてではないとも思っています。観光にかかわっている人が皆、もっと観光とは何かを真剣に考えるべきだと思っています。
 
徳江 考えることによって観光にイノベーションも生じることになります。天空の森もそういったイノベーションかもしれませんね。
 
田島 ほかにはまったくありえないやり方ですからね。
 
シャスリー でも、あれをはじめたときは、この人は頭がおかしくなったんじゃないかと思いましたよ(笑)
 
徳江 今までなかったことをやろうとすると、周囲からは変人に見られることも多いですね。
 
田島 きっと私は一生、変人なんです(笑)
 
徳江 ただ、天空の森も、雅叙苑と同じように、地元の良さを武器にしているのは同じですよね。その手法が違うだけで。
 
田島 世界中のセレブがここに来てくださる。それは、霧島を認めてくれた、ということでもあると思うんです。
 
シャスリー 手前味噌ですが、実際、フランスでは決して味わえない魅力が、ここにはあります。
 
徳江 私のような庶民が味わう機会はなかなかないですが、今回はその片鱗を垣間見させていただきました。本日は、まことにありがとうございました。
 
編集補助:東洋大学徳江研究室(今回担当:4 年生・3 年生全員)
【本連載はJSPS 科研費26570028 ならびに
26283018 の助成による研究成果でもあります】
撮影:天空の森

「忘れの里 雅叙苑」
〒899-6507
鹿児島県霧島市牧園町宿窪田4230
TEL : 0995-77-2114
http://gajoen.jp/
「天空の森」
〒899-6507
鹿児島県霧島市牧園町宿窪田市来迫3389
TEL : 0995-76-0777
http://www.tenkunomori.net/

田島 健夫(たじま たてお)氏
「天空の森」「忘れの里 雅叙苑」
「田島本館」オーナー
東洋大学卒業後、信用金庫勤務を経て1970 年に「雅叙苑」を創業する。当初は集客に苦しむものの、古民家の移築をするなどして評判の宿に。1993 年に近隣の山林を買収し、自身の手による開拓をスタート。1997 年から同地で「天空の森」に来客を迎える。

シャスリー 範子(シャスリー のりこ)氏
「天空の森」「忘れの里 雅叙苑」
「田島本館」ディレクター
田島健夫氏と、現在、雅叙苑の女将である田島悦子氏の娘として生まれる。University of London Institute in Paris卒業後、パリを中心に活躍。現在は日本とフランスとを往復する日々。

徳江 順一郎(とくえ じゅんいちろう)
東洋大学国際地域学部国際観光学科
准教授
上智大学経済学部卒業、早稲田大学大学院商学研究科修了。大学院在学中に起業し、飲食店の経営やマーケティングのコンサルティング、内装デザイン事業などを手がける。2011 年から東洋大学国際地域学部国際観光学科に着任。

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