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【レポート】国産ヴィンテージ酒試飲体験イベント「& 古酒2023 in GRAND GINZA」

2023年01月16日(月)
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高級熟成古酒ブランド「古昔の美酒(いにしえのびしゅ)」を販売する株式会社匠創生による試飲体験イベントが2023年1月14日にGINZA SIXの最上階に広がるTHE GRAND GINZAで行われた。イベントは2部制、各部定員90名で盛況の中開催された。
 
イベントでは、1984年に造られた日本酒含め熟成古酒7種と新酒5種の飲み比べが行われ、古酒とのペアリングを考えた特製ワンプレートと銀座マキシムの苺のミルフィーユが提供された。2脚のワイングラスも用意されており、2021~2022年で海外の3つのコンクールで金賞を受賞した2010龍力と、その酒蔵本田商店の新酒が入っており、2010龍力で乾杯した。参加者は、音楽を通じた地方創生を目指す音楽島アーティストの生演奏とともに、古酒の魅力とペアリングを楽しんだ。

古酒と新酒の飲み比べ
古酒と新酒の飲み比べ
ペアリングを考えた特製ワンプレート
ペアリングを考えた特製ワンプレート

伝統文化を世界へ
株式会社匠創生は株式会社パソナグループのグループ会社であり、グループのベンチャーファンドからの出資を得て設立された。全国の酒蔵に眠る日本酒などの古酒を掘り起こし、「古昔の美酒(いにしえのびしゅ)」として販売を行っている。年々減少を続ける酒蔵を回り信頼関係を構築、ウィスキーやワインのように熟成という切り口で國酒の新たな販路創出や高付加価値化に取り組んでいる。
 
 
古酒の魅力を多くの方に知ってもらいたいと語る
株式会社匠創生 代表取締役社長 安村 亮彦氏
 
古昔の美酒は、原則10年以上の長期熟成や厳選を重ねたセレクションになっており、海外コンクールでも高い評価がされている。例えば、乾杯で用いられた「古昔の美酒 2010年 龍力 純米」は、世界中の女性ワイン専門家が選ぶ「フェミナリーズ世界ワインコンクール」、フランス最高職人の資格であるMOFの保有者やフランスの一流ホテルのトップソムリエなどが審査する「Kura Master」、そしてイギリス・ロンドンで毎年開催されている世界最大規模のコンペティションである「インターナショナルワインチャレンジ」でも金賞を受賞している。(IWC 2022 Gold, Féminalise 2021 Gold, Kura Master 2022 Gold)
 
古酒の魅力と販売について
古酒の魅力の一つとして、長期間熟成されたお酒から香る「熟成香」があげられる。日本酒の場合、通常生産して時間が経ったものは「老香」と呼ばれる香りが出て、品質の劣化として評価される。それでは、「老香」と「熟成香」とはどう違うのであろうか?ワインでも似たようなことがシェリーやマディラなどの酸化的な熟成を経るお酒で議論されることがある。日本酒の場合、磯谷(2011)の研究が詳しい。老香清酒と長期熟成酒を比べた際、老香清酒は相対的にポリスルフィドと呼ばれる成分が多いのに対し、長期熟成酒はソトロンなどのカルボニル化合物やコハク酸ジエチルが多い傾向がみられるとの事だ。
 
ソムリエの方は、どこかでこのソトロンという化合物の名前を聞いたことがあるかもしれない。官能基と香りについては詳しくは述べないが、環状エステルのことを化学の世界ではラクトンと呼ぶ。ウィスキーなどの評価でもオークラクトンという単語を聞いたことがあるのではないだろうか?ソトロンはそのラクトンの一種であり、濃度によって香り方が異なる。熟成古酒が焦げたようなニュアンスや糖蜜にカラメルやラム酒、醤油やスパイスなどの香りがするのに寄与する。
 
 
古酒も魅力と楽しみ方について話す
THE GRAND GINZAソムリエ 高橋 正英氏
 
熟成中には、様々な化学反応が行われる。酸化、加水分解、脱水縮合といった反応は温度によっても異なる。また、光によりラジカルという活性種が生まれることもある。保存状況やシャンパーニュのデゴルジュマンの日付が意味を持つのはこうした理論背景がある。そして、別の視点ではキャッシュの問題など熟成にまつわる事柄は多い。こうした事情を理解すると「日本酒を買って家で熟成させると同じようになるのか?」というサービス中に聞かれそうな問にも答えやすくなる。
 
ウィスキーやブランデーなど洋酒ではなく、日本酒や焼酎、梅酒などの國酒の熟成販売には、まだ海外ほどのノウハウがない。メーカーや流通業者によるプロモーションに合わせて、飲み手との対話を行うサービス側にも経験や知識の蓄積が必要となってくる。古酒は量が限られ高額にもなるため、こうした課題をいかにクリアしていくかも流通全体を通じて議論しなくてはならない。
 
参加者は各々古酒の魅力を楽しんでいた。私自身、こうして古酒を飲み比べる機会が少なかったため、学びとなった。株式会社匠創生、THE GRAND GINZAともに地域創生というキーワードで繋がっている。日本や地域を盛り上げるためのこうした活動が増え、より多くの方にお酒を楽しんでもらえる機会が増えれば良いと感じる。そうした意味で、イベントはその入り口として魅力的であり、今後も継続して続けていって欲しいと願う。
 
【試飲古酒7銘柄】
古昔の美酒 1984 岩の井 山廃純米(岩瀬酒造/千葉)
古昔の美酒 1995 葵鶴 純米(稲見酒造/兵庫)
古昔の美酒 2000 朝日川 本醸造(朝日川酒造/山形)
古昔の美酒 2009 幻の瀧 吟醸(皇国晴酒造/富山)
古昔の美酒 2010 龍力 純米(本田商店/兵庫)
古昔の美酒 1984 抜群 麦焼酎 原酒(抜群酒造/熊本)
古昔の美酒 2009 松藤梅酒(松藤/沖縄)
 
【試飲新酒5銘柄】
岩の井 純米吟醸(岩瀬酒造/千葉県)
酒壺 純米大吟醸(稲見酒造/兵庫)
浅黄文政五年 純米大吟醸(朝日川酒造/山形)
幻の瀧 純米吟醸(皇国晴酒造/富山)
山田錦しぼりたて 特別純米(本田商店/兵庫)

【古昔の美酒 公式サイト】
https://oldvintage.jp/
 
【参考文献】
磯谷敦子, 清酒の熟成に関与する香気成分, 生物工学, 2011, 89, 720-723

担当:小川

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